第25話 スタバの2階

 スタバへ行くと、外まで並んでいた。こりゃたまげた。出雲へ来て並ぶのは初めてではないか。さすがスタバだ。並んでいる間に、次の電車を調べた。すると、10分後くらいの電車があった。今すぐ買って、駅へ行けばちょうどいい時間だが、並んでいるのですぐには買えないし、そもそもデカフェにすると10分ほど待たされるのだ。絶対に無理だ。そして、その次の電車はなんと1時間後だった。マジかー!コーヒーを買わずに今すぐ駅へ行けば間に合う。でも、何もそんなに急ぐ事はない。今、せっかくコーヒーを飲もうとしているのだ。1時間くらい、どうと言う事はない。

 意外に順番はすぐに回ってきた。暑いので、アイスコーヒーをデカフェで注文した。すると、やはり10分ほどお待ちいただくと言われ、了解すると、

「2階でお待ちになりますか?」

と聞かれた。1階にも2階にも席があるようだが、1階はほぼ満席だった。だが、2階なら座れるという情報は、先程後ろに並んでいる人達が話していたので心得ていた。

 座れるのは良い事だと思い、何となくはい、と答えてしまった。そうしたら、

「グラスで提供いたします。」

と言われた。ああ、そうか。そうなるのか。そして、

「カフェイン有りになってしまうのですが、試飲用のコーヒーをお持ちになりますか?」

と、聞かれた。いやいや、何の為に10分も待ってデカフェにすると思うのよ。

「あー、カフェインはダメなので。」

と言うと、それならハーブティーをくれると言う。きっと何も持っていない状態で席に座っているとダメなのだろう。それをもらうと言った。

「シロップを入れても美味しいですよ。シロップは2階にありますので。」

と、言ってくれた。小さいプラコップを持ち、階段を上がった。1階の混雑具合とは打って変わって、2階はガラガラだった。そして広い。窓が大きくて、眺めも上場。ちょっと窓ガラスが汚れているのが気にはなったのだが。

 窓の方に向かって座る、カウンター席のような感じのところに座った。すると、同じ並びに女性2人が座った。おいおい、こんなに空いてるんだから、近くに座る事はないだろう。しかも、ここは1人用の席なんだから、2人ならテーブルへ行けよ、と思ったが、

「ここいいね。」

「いい眺めだね。」

などと言っていて、これはもう仕様がない。2人の話がこっちへガンガン入ってくるのが嫌だったが、今から席を移動するのも面倒なので、我慢した。

 さて、ハーブティーは赤い色をしていた。ローズヒップかなと思った。ファミレスでドリンクバーを頼むと、コーヒーや紅茶が飲めないのでけっこうハーブティーを飲むことがある。ローズヒップもよく飲む。酸味があるが、それなりに美味しいものだ。しかし、このハーブティーは何だ?確かに酸味が強いが、それだけでなく、なんだか穀物っぽい匂いがする。ビールの原料の……ピートだっけ?ビール工場で嗅いだ匂いに似ているかもしれない。ビールになれば美味しいが、このお茶にこの匂いはいただけない。シロップを入れても匂いは消えまい。うーん、これでのどの渇きが癒えてしまっては勿体ない。コーヒーが来るのに。

 と言うわけで、ハーブティーを飲むのは辞めた。そのうちにコーヒーが運ばれてきた。細かい氷がたくさん入っている。飲んでみたら、薄い。これは良くなかった。カフェインを除去すると苦みが少なくなる。ただでさえちょっと味が薄くなるのに、氷を入れたらもっと薄くなってしまうではないか。しかも、ここは冷房が効いているようで、とても涼しい。アイスコーヒーが欲しいという感じでもなかった。少し飲んで後は電車で飲みながら、という目論見もあったのに、2階で待つと言ったばかりにグラスに入れられてしまい、外へ持ち出すことができなくなってしまった。2階で待つけれどもテイクアウトでと言えばよかったのだろうか。私はスタバも、マックのように全て使い捨てのカップで提供されるのだと思っていた。やっぱりスタバは難しい。

 だが、ここには無料Wi-Fiがあった。夕べ最後まで観られなかった動画があって、早く見たかったので、イヤホンをしてそれを観ることにした。何しろすぐ近くでおしゃべりしている人がいるので、本を読む気にもなれない。もっとたくさんの人たちがおしゃべりしていたら気にならないのだが。

 ぼちぼち良い時間になったので、氷と赤いハーブティーを捨て、カップやお盆を返却し、店を出た。駅へ向かって歩こう。外は晴れて日差しが強いのだが、涼しい所にいたのであまり暑いとは感じなかった。

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