第8話 空港バス~松江駅
バスは確かに橋を渡ったが、それほど高く上っている感じでもなかった気がする。そのCMを知らないから、期待値が大き過ぎたのだろうか。
鳥取県と島根県の境目には「中海」と言われるほぼ湖のような海があるのだが、その中海に浮かぶ島を経由して細い道が通っている。今、空港連絡バスはその細い道を行く。道路の両側が海で、思った以上に自然がいっぱいで、美しい風景だった。
松江市に入った。新しい家がたくさんある。山や水は多いが、雰囲気的には普通の地方都市と変わらない。ただ、平日なのに車が少ないような気がした。松江駅周辺には、モスもマックも王将もある。何でも揃っている。だから地方都市は好きだ。駅にはスタバもあるし。
45分で松江駅前に到着した。かなりどんよりとした曇り空だが、幸い雨は降っていない。バスを降りた。次は別のバスに乗って泊まる予定のホテルへ行き、スーツケースを預けてから観光しようと思う。あらかじめ、チェックイン前に荷物を預かってくれる事は確認済みである。
ここは駅前のバスターミナル。さて、どのバス停から乗れば?……って、ぜーんぜん分からない!ナニコレ?こんなにたくさんバス停があるとは想定外だ。
よく考えよう。私は自分にそう言い聞かせた。行けば何とかなると思ったが、バス停は7つもあり、行先が書いてあっても、それがどこなのか分からない。困った。本当に、この7つは全部違う路線なのだろうか。そりゃそうだよな。
7番のバス停は「レイクライン」だった。周遊バスで、間違いなくパーフェクトチケットで乗れる。そのバス停へ行ってみると時刻表があり、次は15分後の12:00。30分に1本なのでその次だと12:30という事になる。とにかく、これに乗れば時間がかかっても着くから、最終的にはこれに乗ればいい。あと15分考える余裕がある。まずはトイレに行こう。
駅のトイレに行って来て、それから目の前のバス停から吟味し始めた。レイクラインは1週50分なので、これに乗ったのではホテルまでだいぶ時間がかかってしまうかもしれない。何しろお昼時だから、なるべく早くホテルにスーツケースを預け、ご飯を食べに行きたいではないか。さて、どのバスに乗ればいいのか。
うろうろした。松江駅は宍道湖の東側にあり、宍道湖から流れ出る大橋川のすぐ南側にある。私が泊まるホテルは、大橋川の北側にある。目の前に「循環バス」と書いてあるバス停がある。何となく、これで行けるような気が……。
そうだ、ホテルの情報を見れば分かるはずだ。予約した「じゃらん」のホテルのページに行き、アクセス情報を調べてみた。すると「JR松江駅より循環バス7分松江市役所徒歩1分」と書いてあった。循環バスであっていた。このバス停には「北循環バス」と「南循環バス」と、両方書いてある。ここに両方来るなんて、他のバス停には何が来るのだろうか。とにかく、私は北に行こうとしているのだから、北循環バスでいいのだろう。
バス停に並んだ。並ぶと言っても2人くらい並んでいるだけだ。時刻表を見ると、次は12:05と書いてある。もしこれが間違いだったら、レイクラインの12:00を乗り逃すが……大丈夫だよな?それから、1つ不安がある。私が持っているパーフェクトチケットで乗れるバスなのかどうか。他に乗れるバスがあるのに、違うバスだったらまずい。そこで、私の前に並んでいる女の子に尋ねてみた。
「すみません、これ市営バスであってます?」
すると彼女は、
「はい。」
と、にこやかに答えてくれた。よかった。
南循環バスが来て、女の子は乗って行った。私は北循環を待つ。だが、その次にもまた南循環バスが来て、心配になる。本当にここで待っていれば北循環バスが来るのだろうか。だが、まだ12:05になっていない。慌てるな。
すると、ちゃんと12:05に北循環バスがやってきた。良かった。後ろから乗って、前から降りるシステムらしい。交通系ICカードで乗る人は、乗る時にカードをピッとやるようだが、私は紙のチケットなので何もせずに乗り込んだ。
お昼時、乗客は少ない。3人くらいかな。しかも、1人はすぐに下りてしまい、ずっと2人だった。ちゃんと行きたい場所へ行ってくれるのか不安で、スマホで地図を出し、現在地が正しい方向へ向かっている事を確認しながら乗っていた。方向としては間違えていないような気がするが、7分で市役所前に着くはずなのに全然近づいていない気がする。ヒヤヒヤしたが、7~8分ほど走ったところでちゃんと市役所前に到着した。やれやれ。
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