第7話 米子空港
10:31に飛行機は着陸した。その瞬間、窓の外を見ると、翼から煙のようなものが出ている。飛行機雲のようにたなびいている。曇り空。枯れた芝生の混じる滑走路脇の地面を見ていると、航空自衛隊美保基地と書いてある倉庫のようなグレーの建物と、自衛隊機と思われる小型飛行機が見えた。
飛行機から降りて、通路を通ってロビーに出ると、天井に大きな「ぬりかべ」が描いてあった。上を向いて写真を撮ったが、写真に納まりきらない。
スーツケースが出てきて、無事赤いハンカチを確認。自分のスーツケースを受け取り、扉を出る。次は総合案内所へ行かねばならない。探すまでもなく、扉を出た所にその総合案内所はあった。誰もお客がいないが、ここで空港バスの切符が買えるのだ。
事前に迷ったのが、バスや電車などのフリーパスだ。ガイドブックの巻末に、必ず載っているのがこういったお得に乗れるフリーパスの類。バスの一日乗車券などが紹介されているものだ。松江でも、周遊バスの一日乗車券や、一畑電車の一日乗車券があるらしいが、周遊バス、松江市営バス、一畑電車、一畑バス、空港連絡バスが3日間乗り放題の「縁結びパーフェクトチケット」なるものもある。空港連絡バスが松江まで片道1000円なので、往復乗るならばもう、パーフェクトチケットは絶対にお得なのだ。しかし、私は帰りに空港連絡バスには乗らない予定である。寄り道をするのでJRなのだ。だとすると、元が取れるかどうか微妙な所だった。
いちいち切符を買ったり、バスで料金を支払ったりするよりは、フリー切符を買った方が断然便利なのだが、パーフェクトチケットよりも一日乗車券を買った方がお得かもしれない。帰る日に一度しかバスに乗らないと考えて、その日は一日乗車券を買わないから、そうなると3日間フリーパスのパーフェクトチケットの方がひょっとしたらお得かなぁというくらいの金額だった。
家で長男に相談したら、バスに間違えて乗ってしまったりしても安心だから、フリーパスの方がいいと思うよ、と言われた。だが、それなら一日乗車券で済む話。けれど、その一日乗車券を1日目も2日目もバス車内で買うとなると、そこはちょっとハードルが高い。運転手さんに話しかけるのってタイミングが難しいというか、乗客を待たせるのも悪いし、運転中はダメだし、迷う事が多いから。変な時に買おうとして、怒られてしまうかもしれない。
というわけで、3日間切符を買わなくて済むように、この縁結びパーフェクトチケットを買おうと決めた。3日間で4000円である。総合案内所で買い求めたら、絵馬の形をしたチケットに明後日の日付が印字されたものを渡され、一緒にたくさんの時刻表が載っている紙と、割引が受けられる施設が載っている紙を渡された。
「バスは10:55に発車なので、まだ時間はありますよ。」
と言われた。とはいえ、今の時刻は10:45だ。空港内にあったコンビニに入り、水を購入。バスは目の前にいると思って外に出たら、それは行先が違うバスだったので、松江行きを探して、そこまで歩いて行くとそろそろ発車時刻だった。やれやれ、ちっとも時間がないではないか。嘘つき~。
バスの前の入り口に運転手さんが立っていた。パーフェクトチケットを見せ、スーツケースをうんこらしょ、と持ち上げてバスに乗り込んだ。乗客はそれなりにいて、座席もまあまあ埋まっていた。スーツケースを転がすには通路が狭いので、すぐ目の前の、前から2番目の席に座った。他の人はスーツケースを持っていないようだ。おかしい。空港から来たのに、手荷物が小さいなんて事はなかろう。あ、もしかしてバスの下に入れたとか?でも、運転手さんに何も言われなかったしな。
バスは間もなく出発した。バス内は非常に静かである。皆さんマスクもしていないようだが、私はそっとマスクをポケットから出して着けた。室内だから、何となく。さて、友達が言っていたように、これから天に上るような橋を渡るのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます