好意を寄せていた女子を自分を良いように利用するクラスの陽キャに取られた。その経験から嫌われる勇気を持ったら美少女が寄ってくるようになった

白金豪

第1話 嫌われてもいい

 普段、胸元影人むねもと かげひとはクラスの陽キャ達から良いように利用されている。パシリ、暴力、イジリ、罵倒などを受けていた。


 しかし、クラスメイトから嫌われたくない。クラスで居場所を失いたくない。これらの感情に負け、我慢して従っていた。


 しかし、これらの感情が消え去る出来事が影人を襲う。


 ある日の放課後。影人は教室から昇降口に向かっていた。帰路に就く途中であった。


 昇降口に向かう途中に通る空き教室に2人の生徒が居た。それらの生徒2人が偶然にも影人の目に入った。


(あれは…)


 1人の女子生徒を認識し、影人は思わず足を止めてしまう。


 女子生徒の名前は初美玲央奈はつみ れおな。肩に掛かる茶色のセミロングに茶色の瞳。日本人特有の黄色の肌を持ち、整った顔立ちをした童顔の美少女。


 その上、影人の幼馴染でもある。クラスは違うが、幼稚園からの付き合いで家も隣同士の仲だ。


 そんな玲央奈が空き教室に誰かと居た。しかも男子と一緒に居る。


 影人は陰ながら玲央奈に好意を寄せていた。小学生の頃から玲央奈が好きだった。


 そのため、どんな男子と居るのか気になり、空き教室を覗き、男子生徒の顔を確認する。


「!? 」


 男子生徒の顔を認識した影人は、戸惑いを隠せない。


 玲央奈と一緒に居た男子は影人のクラスメイトであり、陽キャのリーダーである多月智介たつき ともすけであった。智介はクラスで1番に影人を自分の思うように利用していた。


 智介と玲央奈から目を離せない影人。


 空き教室内で良い雰囲気が流れる。智介と玲央奈だけの世界ができる。


 智介が慣れた手付きで玲央奈の頬に触れる。


 恥ずかしそうに玲央奈は頬を赤く染める。完全にメスの顔を作る。


 簡単な言葉を数回交わすと、智介と玲央奈の唇がどんどん接近する。


(やめろ…。やめろ~~)


 心の中で何度も叫ぶ影人。だが声は出ない。


 とうとう智介と玲央奈の唇が重なってしまう。


 その光景が影人の目に焼き付く。見たくないのに目が離せない。何とも残酷なのだろう。


 数秒ほど続いた2人のキスが終了する。2人の唇がゆっくり離れる。


 数秒間、近くで見つめ合う智介と玲央奈。


 2人は嬉しそうに恥ずかしそうに手を繋ぐ。


 まだ影人に対する悲劇は終わらなかった。


 偶然にも智介が影人の存在に気づく。


 自然と影人と智介の目が合う。


 二ヤ~~。


 智介は勝ち誇ったように醜い笑みを浮かべた。


 そして、追い打ちを掛けるように、再び玲央奈の唇を奪った。


(あぁ~~。そういうことか~~)


 この時、影人は痛いほど理解した。


 この世はイケメンやスポーツの得意といった能力の高い人間が強い。


 強い者しか欲しい物を手に入れらず、影響力も持てない。この世の真理だと確信した。


 そんな強い人間に良いように従い、利用されることが心底バカらしくなった。


 ある感情が影人に芽生えた。


(とにかく強い人間に少しでも、いや徹底的に抵抗したい。奴らの好きにはさせるもんか)


 このために、クラスメイト全員に嫌われて良いと思った。クラスでの居場所も失っていいとも思った。


 それだけの覚悟も持てる自信が有った。


 そのためにやるべきことは1つだった。次の日から学校生活で態度を改める。ただそれだけだった。


(明日から考え方や行動を一新してやる)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る