第6話ー④「クレープ食べに行こう」
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メッセージアプリで連絡してから、すぐに宮本さんから、連絡が入った。
「羽月さん、大丈夫?」
少しばかり、覇気を感じない声色だったが、それでも久々の友人の声に元気が出た。
「だいぶ、元気になった」
「良かった・・・」
安堵の籠った声にあたしは少しばかりの違和感を覚えた。
すぐさま、その思いを彼女に問いかけることにした。
「どうしたの?」
「ごめんね、あの時、夏祭りに行けなくて」
「別に、暁と行くって、決めてたし。宮本さんは行かなかったの?」
「いや・・・。夏祭りって、リア充のたまり場じゃん?茜を振った男ばっかがいるから、いい思い出なくて」
彼女は何を言っているのだろう?それだけが頭に浮かんだ。
「元気そうで良かった。じゃあ」
「何か、あったの。私、あの時のこと、全然覚えて無くて」
宮本さんは嘘が下手だ。たかが、体調不良如きでこんな電話は掛けて来ない。何かを確認する為に掛けているのだろうと言うことはすぐに推察出来た。
「ごめん、実はね。噂になってるんだ。羽月さんと暁がデートしてるって噂が」
「あっ・・・そう」
正直、あのテストの頃から流れてる噂なので、正直、どうでもよかったに尽きた。 だが、その程度で、私が記憶を失う訳がないのは、明白だった。
「本当は何があったの?何か知ってるんでしょ?」
すると宮本さんは何処か申し訳なさそうな声で話し始めた。
「その先は当事者に聴いて。茜はそれ以上は話せない」
「暁め、また私に余計な」
「ううん、そうじゃないの。これだけは言わせて。記憶を失ったなんて、言われたら、余計に話せないよ。それにあいつも傷つく所は見たくないって。だから、今は信じてあげて」
宮本さんは通話を切り、私は独りベッドに倒れ込んだ。
「暁が」
一体、暁は何のつもりで、そんな話をしたのか。今の私には想像出来なかった。
それから、夏期講習に通う日々を送り、いつの間にか、短くも濃密な夏休みは終わりを告げ、季節は二学期に向けて、動き始めた。
その後、暁からの連絡はぱったりなくなり、私は彼女の記憶の中から、消えたような感覚に襲われた。まるで元から、この世界に居なかったかのような・・・。
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