第15話

香織と涼介は、日本に戻ってから数日後、真紀の父親から緊急の連絡を受けた。彼の声は緊張と興奮で震えていた。


「香織さん、涼介さん。先ほど真紀の遺品を整理していたところ、遺書が見つかりました。」


その知らせに二人は驚きと期待を抱きながら、すぐに真紀の実家へ向かった。真紀の父親はリビングルームで彼らを待っていた。彼の手には、古びた封筒が握られていた。


「これが、真紀の遺書です。」彼はその封筒を慎重に香織に手渡した。


香織は深く息を吸い、封を開けた。中から取り出した紙には、真紀の丁寧な字で綴られたメッセージがあった。涼介と共に、それを声に出して読み始めた。


「愛する夫へ。あなたとの時間は私にとってかけがえのないものでした。あなたを失った悲しみは計り知れないけれど、あなたの愛を忘れたことは一度もありません。いつも私の心に生き続けています。」


「お父さん、お母さん。私を育ててくれてありがとう。あなたたちの愛と支えがあったからこそ、私はここまで来ることができました。あなたたちに感謝の気持ちを伝えられることが、私の最後の願いです。」


香織の声が静かに部屋に響く中、真紀の両親の目には涙が溢れていた。涼介は真紀の遺書をじっと見つめ、彼女の思いを深く感じ取っていた。


「真紀は絶望の中でも、愛と感謝の気持ちを持ち続けていたんですね。」涼介は静かに言った。「その気持ちが、彼女を支えていたのでしょう。」


「そうですね。この遺書には、彼女の本当の気持ちがすべて詰まっています。」香織もまた、その言葉に同意した。「彼女の死の真相を明らかにするためには、この遺書が重要な手がかりになります。」


二人は真紀の遺書を手に、彼女の心の奥底に触れた。その中には、彼女が再生を求めながらも絶望に打ちひしがれていたこと、そして最後まで愛と感謝の気持ちを持ち続けていたことが明らかになっていた。


「これで、私たちは真紀の本当の思いに近づけた。」涼介は深く息を吐き出し、決意を新たにした。「彼女のために、真実を解明するんだ。」


「ええ、私たちならきっとできるわ。」香織もまた、強い意志を持って頷いた。


その後、香織と涼介は真紀の日記をさらに詳しく読み解くことにした。日記には、彼女がインドで感じたことや再生の儀式に対する思いが詳細に記されていた。


「再生の儀式は、私にとって最後の希望だった。ガンジス川の神聖な水で浄化され、新たな命を得ることを願っていたけれど、心の痛みは消えなかった…」


香織は真紀の言葉を声に出して読みながら、彼女の深い絶望と再生への希望が交錯する心の葛藤を感じ取った。


「彼女は再生を求めていたけれど、その希望が叶わなかったことがわかるわね。」涼介は真剣な表情で言った。「その絶望が、彼女をさらに追い詰めてしまったのかもしれない。」


「ええ、でも彼女の中にはまだ愛と感謝の気持ちがあったわ。」香織はそう言って、遺書を再び見つめた。


真紀の日記と遺書を手掛かりに、香織と涼介は彼女の死の真相を解き明かすための新たな一歩を踏み出した。彼らの心には、真紀の愛と感謝の気持ちが深く刻まれ、再生の旅は続いていった。

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