第11話

ガンジス川のほとりでの調査が続く中、香織と涼介は「再生の川」についてさらに深く掘り下げる必要があると感じていた。ある日、彼らはラージ・クマールの案内で、絵画の由来を探るために地元の古い寺院を訪れた。寺院には、古代から伝わる絵画や彫刻が数多く保存されていた。


寺院の僧侶は、真紀が訪れたことを覚えており、彼女が熱心に絵画を調べていたことを話してくれた。僧侶の案内で、香織と涼介は寺院の奥にある特別な部屋に案内された。そこには、同じようなスタイルで描かれた複数の絵画が展示されていた。


その部屋で、香織は一冊の古い書物を見つけた。書物には、「再生の川」を描いた画家についての詳細が記されていた。画家は、古代インドの宗教的指導者であり、彼の作品は再生と犠牲のテーマを象徴していた。


「この書物には、絵画の背後にある物語が書かれているわ。」香織は涼介に向かって言った。「画家は、再生のためには犠牲が必要だと信じていたみたい。」


涼介は書物を手に取り、その内容をじっくりと読んだ。「真紀がこの絵に惹かれた理由が少しわかる気がする。彼女は再生の希望を求めていたけど、それが犠牲を伴うものだと知っていたのかもしれない。」


書物の中には、再生の儀式についての詳細な記述もあった。画家がガンジス川で行った儀式の一つに、特定の植物のエキスを使ったものがあり、それが再生と浄化の象徴とされていた。しかし、その植物は同時に強い毒性を持ち、誤って使用すると命を奪う危険があった。


「この植物が真紀の死に関係しているのかもしれない。」涼介は書物を閉じて言った。「彼女がこの植物を手に入れていたなら、それが原因で毒殺された可能性が高い。」


香織も頷いた。「真紀がインドで手に入れたもの、それが彼女の死の原因になったとしたら…」


寺院から戻ると、香織と涼介は真紀の死の真相に一歩近づいた気がした。しかし、同時に新たな疑問も生まれていた。真紀がどうしてその植物を手に入れたのか、そしてその植物がどうやって彼女の体内に入ったのか。


「私たちはまだ全ての答えを見つけていないわ。」香織は言った。「真紀がこの絵にどれだけの意味を見出していたのか、それをもっと深く理解しなければならない。」


涼介も同意した。「彼女がこの絵を持ち帰った理由、その背後にある真実を探るために、もっと多くの情報が必要だ。真紀が信じた再生の意味を見つけ出さなければ。」


その夜、香織と涼介は宿に戻り、再び真紀の日記を読み返した。彼女がガンジス川で感じたこと、絵画に対する思い、そして再生の儀式についての記述を読み進めるうちに、彼らは真紀の心の奥底にある真実に少しずつ近づいていった。


「真紀が何を求めていたのか、その答えがこの日記に隠されているはずよ。」香織は涼介に言った。


「そうだな、香織。僕たちは必ず真紀の願いを見つけ出す。そして、彼女の死の真相を解明するんだ。」涼介は静かに決意を新たにした。


ガンジス川の静かな流れに耳を傾けながら、香織と涼介は真紀の死に隠された謎を解き明かすための旅を続けることを誓った。彼らの旅はまだ終わっていなかったが、その旅の中で見つけた希望と力が、彼らの未来を照らし続けることを信じて。


香織と涼介は、真紀の死の真相を追求する中で、再びインドの地で新たな手がかりを発見した。ガンジス川の流れと共に、彼らの心もまた再生の道を歩み続ける。その先に待つ真実とは何か、彼らの旅はまだ続くのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る