第4話 初心者~この世界の常識~
俺の名前は、おでん。
いわゆる異世界転生者というやつなんだが、女神に嫌われるようなことをしたので転生者特典無しで異世界に来てしまった。
転生者特典?
・魔力大(この世界の住人よりも)⇒魔力ゼロ
・言語能力(読み書き)⇒読めない、書けないので勉強中
・固有スキル⇒なぜか使えるようだ
・姿、年齢変更可⇒転生前の姿、年齢だった…等
と後日聞いた。
この世界に来た次の日の朝。
俺は休憩室で起きたあと困った。
昨日は疲れて気にしてなかったが、狼もどきとのバトルでズボンがボロボロになっていた。しかも左脚の方だけ。仕方がないからバランスを取るために左右の裾を揃えることにした。それから朝食のために酒場に向かった。
ある冒険者『おい、おでん、なんだ、その恰好は!朝から笑わせてくれるな。』と笑い出した。他の冒険者も笑っていた。昨日奢ったことでみんなフレンドリーな対応をしてくれる。おでんの計算通りだった。
おでん『ハハハハハ。』【そうだよな。大の大人がひざ丈の半ズボンをはいてるんだから。まるで名探偵○ナンだ…でもまあ、服のセンスは子供、体型は大人ってか。】
マリー『おでんさん、なんですか!その恰好は…あっ、替えの服は無かったんですよね。あとで服を買いに行きましょう。でもその前にギルマスが呼んでます。』
そして、ギルマスの部屋に来た。
ギルマス『………おでんだったな。まあ、ちょっとした世間話だ。かしこまる必要は無い。その恰好では畏まってる風に見えんがな。』
おでん『はい。あとで服を買いに行ってきます。あの、もしかして部屋代とかのことでしょうか?』
ギルマス『部屋代?ああ、休憩室のことか。要らん。新人からお金を取るほどこのギルドは困ってない。聞きたいのは、君自身のことだ。』
おでん『自分の?身長、体重、年齢?』
ギルマス『そんなのはどうでもいい。魔力が無いそうだな。あと読み書きができない。』
おでん『ああ、そっち!その通りです。』
ギルマス『転生者なんだよな。』
おでん『そう言われると困ります。えーと簡単に言いますと、転生するときに女神様に嫌われたようでして………。』
ギルマスの目が光り『犯罪者か。』と殺気を放つ。
その殺気に息が詰まる。
おでん『ち、違います。実は……。』と女神とのやり取りを話した。
ギルマス『………。』
おでん【疑ってるのかな。証明できないし、困ったな。】
ギルマス『クククク、ハハハハハ。あー面白い。なるほど。』と大笑いし出した。
ギルマス『そういうことなら納得した。ということは、魔力が無いならステータスは分からないんだな。あの魔物たちを倒すんだから、ステータスの何らかの能力値が高そうなんだが…。』
おでん『ステータス?』
ギルマス『そうだ。自身の能力値が分かる。獲得したスキルやスキルレベルもな。』
おでん『どうやって見れるんですか。』
ギルマス『ステータスオープン、と言えばいいが、自身の魔力を消費するからお前のような魔力の無い者は使えん。あと固有スキルも魔力を消費するから持っていたとしても使えんし、そもそもステータスが見れないから固有スキルを持っているかすら分からんしな。』
おでん『そうですか。残念。』
ギルマス『そもそも魔力がないとスキルが使えないから、そういう者のステータスはたかが知れてるだろうというのが常識だった。例外が出てきたわけだ。』
おでん『ハハハハハ。』
その後、マリーに連れられてあるお店にやってきた。
マリー『ここで服を買いましょう。』
服屋『おや、マリー、デートかい。』
マリー『違います。お客を連れてきたんです。ほら、ズボンがひどいことに。』
服屋『そんなことは入ってきたときに見たから分かっとる。からかっただけだ。』
おでん『初めまして。えーと、できれば安くて丈夫で履き心地のいいズボンと着心地のいい服をお願いします。』
服屋『無茶苦茶な意見だが、もっともな意見だ。気に入った。特別に割り引いてやる。これなんかどうだ。』
おでんは、マリーの方を見る。この世界のセンスが分からないからだ。
おでん『マリーさんお薦めのはどれですか?よくわからなくて。』
マリー『そーねえ。こっちの方が良さそうね。これを数着買えばいいと思いますよ。』
おでん『じゃあ、それにします。』
服屋『どう見てもデートじゃないか。もう尻に敷かれてるようだな。ハハハハハ。』
おでん『ハハハハハ。』と笑い返した。
おでん【マリーさんはどう思っているのだろうか。まあ昨日会ったばかりだしな。俺は……まだ恋愛感情は無いかな。でも抱きたいタイプではあるよな。いつか一発お願いしてみようかな。】と邪なことを考えてしまった。
おでん『この着てた服は買い取ったりしてるんですか?』
服屋『はあ?こんなボロ服を?タダで捨てるぐらいだ。』
おでん『え~。ほら、異世界の服だから布が貴重だから高く買い取るとか。』
服屋『ん?お前、転生者か。そんな偽情報はどこからのものだ。』
おでん『いや~。』【向こうの異世界小説の世界の話だとは言いづらい。】
おでんは、知らなかった。
転生は、魂となったものを違う世界に再構築するのだ。つまり服もその世界の材料で成り立っている。
転移=召喚は、そのまま違う世界に来るから、服は前の世界の物になるから貴重なのだった。
服を買ったついでに武器屋に寄った。
武器屋『どのような武器、防具をお探しでしょうか?』
おでん『実は、これを拾ったのですが、鑑定してもらえますか?』と先日拾った錆びた短剣を見せた。
武器屋『これは………単なる短剣です。特に付与属性も隠された機能もありません。まあどこにでもある短剣です。よく護身用に皆さん買われますよ。』
おでん『分かりました。ありがとうございます。』【俺が勇者なら錆びた短剣も隠された何かがあるものだったんだろうな。つまり俺は凡人だ。はあ~。】
マリー『武器や防具を買わないんですか?』
おでん『まだ自分の攻撃スタイルが分からないから、それまではもらった剣や拾った短剣でいいかなと思う。』
武器屋『先行投資しないと死んだら元も子もないぞ。』
おでん『そのときは運が無かったと思いますよ。今の自分ではどれも宝の持ち腐れになりそうですから。』
マリー『フロックンウルフをソロ討伐する人なのに。』
武器屋『何!おい!それならフロックンウルフの牙を持ってきたら格安で毒牙の短剣を作ってやろう。』
おでん『毒牙の短剣?』【かっこいいネーミングだ】
おでん『鍛冶もやってるんですか。』
武器屋『いや、知り合いのところに持ち込む。』
マリー『でも、ソロは危険ですからせめてパーティを組んでくださいね。』
おでん『はいはい。では討伐出来たら持ってきます。』
その後、日常で必要なものを買うのに案内してもらい、そのお礼に食事を奢った。
どう見てもデートだった。
その後の数日は、マリーに生活していく上で必要な読み書きを教えてもらいながら勉強している。
マリー『この絵本が文字を覚えるのに一番いいと思います。子供たちはみんな読んでいるはずなので。もちろん私もいっぱい読みました。』と一冊の絵本を貸してくれた。
おでん『ふーん、勇者とお姫様の話?ベタだな。』
マリー『?』
おでん『いや、ありがとう。』
やっぱり俺に気があるんでは?と思いたくなってしまうほど親切だ。
マリー『2階のギルマスの部屋の隣に本がいっぱいある図書室と呼ばれる部屋がありますから、読めるようになってきたら利用されるのもいいですよ。』
おでん【図書室。漫画とかあるかな。でもあのギルマスが近くにいると思うとあまり行きたくないな。】
おでん『ギルマスは、ずーっと部屋に?』
マリー『ええ、書類とにらめっこしてるわ。用事?』
おでん『いやいやいや、なんでもないです。』
おでん【実はスキルが使えるんです、と言えば良かったかな。うーん、バレたらそのときに言おう。言い訳は、”聞かれなかったから”と言おう。】
マリー『おでんさん、おでんさん、どうしたんですか?分からないところがありました?』
おでん『えっ、ちょっと考え事をしてて。大丈夫です。分からないことがあれば聞きにいきます。』
ある早朝
おでん『最近、勉強ばかりで体を動かしてなかったからな。少し走るか!』と思い、街の城壁の周りをジョギングした。
1周したところで門番に
門番『毎日続けることが重要なんだぞ。』と言われた。
おでん『………。』息が切れて返事できなかったので頷いて返事した。
おでん【体力ないなあ。転生前の体力のままなのか。継続は力なり、だ。】
また、地下訓練所で
おでんは一人で剣を振っていた。いわば素振りだ。剣道をかじったこともないので自己流だが、何もしないよりはいいだろうと思ったのだ。
おでん【とにかくできることはやろう。】勉強、体力づくり、剣の腕前…。
おでん【でも、社畜時代より楽しいかも】と思ったりした。
またある日
今日は、久しぶりに依頼をこなそうかと思い、
おでん『毒消し草採取に行ってきま~す。』とマリーに言った。
マリー『はい…って。おでんさんは一応まだF級ですよ。言いましたよね。パーティーを組んでくださいと。ソロなら薬草採取にしてください。』
おでん『はーい。』と返事して出て行こうとした。
ギルマス『おい。』
おでんが直立不動になった。『はい。』
ギルマス『なあ、俺は何もしないぞ。』
おでん『えーと、条件反射的な感じでしょうか。ハハハハハ。』【雰囲気がすでに怖いんだよな】
ギルマス『まあいい。お前にこれをやるよ。』と袋を渡そうとした。
マリー『それは!』
おでん『はあ………ありがとうございます。』【小さい袋だな。でも草類を入れるのに丁度いいか。】と思った。
マリー『ギルマス、それはマジックバッグですよね。いいんですか。』
ギルマス『いいさ。俺はデスクワークが忙しくて使わんし。』と嘆いた。
マリー『それは自業自得です。まあギルマスがいいと言われるなら。』
ギルマス『というわけだ。おでんのマジックバッグは、俺の登録品だから盗むとどうなるか分かるよな。』とギルド内にいる冒険者に聞こえるように言った。
全員が頷いたように見えた。
おでん『マジックバッグって、もしかして異次元袋!スゲー。』
マリー『知ってるんですか。』
おでん『何でも入るんだよな。』と頷いた
ギルマス『そうだ。フロックンウルフなら10匹は余裕で入るぞ。』
おでん『おお~。持って帰るのが楽になるなあ。…………。』と袋を見つめていたかと思うと、いきなり頭を袋に突っ込んだ。
ギルマス『おい!』と慌てておでんを袋から引っ張り出した。
マリー『何をするんですか?』
おでん『えっ。中がどうなってるか気になって。』
ギルマス『死ぬぞ。生き物はこの袋の中では生きれないんだ。まあ、実際どのくらいで死ぬかは分からんが、生きた魔物や使い魔は全て死んだらしい。』
おでん『そうなんですか。』
マリー『おでんさん、死にかけたんですよ。もっとリアクションがびっくりするとかないんですか。』
おでん『一度死んだからかな。これって便利そうだけど、万能ではないということですね。分かりました。あと登録がどうとか。』
ギルマス『マジックバッグは、製作不可だ。ダンジョンで発見されるものが市場に出回るのみ。だから非常に高値で売買される。当然、持っていれば狙われるというわけなんだが、その対策として、マジックバッグごとに持ち主を登録している。このマジックバックを盗んで売ればいずれ足が付く。登録者が力のある者なら買わないだろう。命が惜しいからな。だから安心して使っていいぞ。』
おでん『なるほど、理解しました。でもどうして俺に?』
マリー『同じ転生者だからですか?』
ギルマス『それもあるけど、なんとなく…だ。』
おでん『同じ転生者…え~!』
ギルマス『前はアメリカ人だ。気を付けて行ってこい。』
マリー『薬草採取ですよ。分かりましたか。』
おでん『日本人です。頑張りまーす。』
おでん【狼10匹。頑張るぞ~!】
“おでんは、マジックバッグを貰って身に着けた”
次の更新予定
魔力ゼロというか転生者特典無しで転生させられたのに、とりあえずスキルが使えたから、まっいいか! 西 彼方 @karaagelike
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔力ゼロというか転生者特典無しで転生させられたのに、とりあえずスキルが使えたから、まっいいか!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます