第3話 レベルアップ。
ふと、前世で受けた何かの講義を思い出す。
植物がアスファルトを突き上げて芽を出した写真を見せながらの講義だったと思う。
教授が静かに語る。
「強い力で一気にアスファルトを突き破ろうとしたら、植物はアスファルトの硬さに負けて、ただ折れてしまったことでしょう」
暗い講義室で、映写機が、アスファルトをゆっくりと押し上げる植物の連続写真を映し出す。
いわゆる早回しだ。
彼は、とても長い時間、日数をかけてアスファルトを破り、地上へと芽を出したのだ。
「とてもとても弱い力をじっくりゆっくりと浸透させる様にアスファルトに加えることで、柔らかい植物の身で、硬いアスファルトに打ち勝ったのです」
◆
そうだ。
根っ子だって同じじゃないだろうか。
俺は、じっくりゆっくりと、下の方に力を加え始めた。
尖った石にすぐにぶつかった。
その石を包み込むかのように、じっくりゆっくりと……
じっくり、
ゆっ
くり
と。
。
。
。
……
ピロン♪
◆
じっくりゆっくり。
ゆっくりじっくり。
弱い力で、けして急がず。
時間をかけて。
気が遠くなるほど。
人間と違って時間は腐る程あった。
俺は焦らず、ゆっくりと下の方に進んでいった。
押し方は、満遍なく力を入れて、ゆっくりと。
そうすると、ジワッ、ジワッと下に進めることができた。
どれ程の時間が、日数が過ぎたのか、それとも年単位の時が経ったのか。
突然にその音は鳴った。
ピロン♪
え、なんだ、なんだ?
とはいえ、俺にはこの音に心当たりがあった。
あれだろ?
「ステータス!」
////////// ////////// //////////
種族名 ***の根っ子
レベル 2
個体名 根男
スキル 穴掘り(Lv.3)、水飲み
////////// ////////// //////////
おっ。
レベルが上がってる。
穴掘りスキルのレベルが2を通り越して3!
めっちゃあがってる。
水飲みスキル忘れてたな。
次はこっちも鍛えるか。
どうやって水飲むんだ?
こうか。
全身で周囲の水を取り込むように。
ゴクゴクゴク。
そうやって水を飲んでみると、自分はかなり喉が渇いていたことを自覚する。
というか、喉は無いんだけどなー。
前世的な比喩表現というやつよ。
感覚的なところは、まだ前世基準なんよなー。
というか、地下水が旨すぎる件。
ん?
なんかあっちの方にもっと美味しい水が沢山ありそうだ。
ようし、成長した穴掘りスキルの力試しも兼ねて、一気に掘り進んでみよう!
いっけーー!!
ピロン♪
ピロン♪ピロン♪ピロロピロン♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます