第27話 再び異世界へ

 トンネルを通って異世界のログハウスへと戻ってきた俺たち。


「戦利品をチェックするわよ!」


 戻ってきて早々にハイテンションとなるルナレナ様――というか、この人は今日一日ずっとこんな調子だったな。よほどあのイベントを心待ちにしていたのだろう。


 俺も長らくあの土地に暮らしているけど、あんなイベントが開催されていたなんて知らなかった。道の駅なんて社会人になってから一度も行ったことなかったもんな。


 ……それだけ、余裕のない暮らしを送ってきたって証拠か。


 あの場にいて気づいたことだが、参加している人たちは本当に楽しそうだった。仮に俺が竜崎くんたちと出会う前にあのイベントに行っていたとしても、今日のように楽しめていたかどうか……いや、きっとできていなかったろうな。


「どうかしましたか、矢凪さん」

「なんでもないよ。それより、俺も買ってきたスイーツをくれないか」

「どうぞっす!」

「ありがとう」


 異世界に来てまでコンビニスイーツとは……でもまあ、おいしいからいいや。

 明日からは平日。

 朝早くから魔境の調査に乗りださなくちゃな。


「次はどの辺りを調べてみようか」

「北側に行ってみるっす!」


 北側、か。

 何かあるのかな?


「どうして北へ?」

「あっちは魔境と人間の生活圏がもっとも近い場所なんすよ。もしかしたらこちら側の人間と遭遇できるかもしれないっすよ」

「竜崎くん……」


 俺が現地の人と会ってみたいって要望を覚えていてくれたのか。


「もちろん、きっちり業務とは絡めてるっすよ? ルナレナ様の魔力が不安定になっている要因として、こちら側の魔法使いが関与している可能性も否定できないっすからね」

「魔法使い!」


 なんとロマンに溢れた言葉なんだ。

 俺も習得しようと頑張って入るが……まだまだ発展途上なんだよな。

 本職の魔法使いがどのようにして魔法を駆使するのか、この目で確かめてみたい。


 明日からの仕事内容に意欲を燃やしていると、アイスを頬張っていたルナレナ様がボソッと呟く。


「ねぇ……もし魔境内で犬っぽい生物を発見したら連れてきてくれない?」

「犬っぽい生物?」


 なんともアバウトな表現だな。


「えぇっと……それはまたどうして?」

「今日のイベントで犬を連れている人が多かったじゃない?」

「そういえば、あそこにはドッグランがありましたからね」

「そこで見たワンちゃんが可愛くて……」

 

 随分とまた急な話を振ってきたな。

 というか、この世界にも犬っているのか?


 ちょっと疑問に感じたので竜崎くんに尋ねてみると、彼はすぐさま首を縦に振った。


「いるっすよ。牧羊犬とか猟犬とか、人間の生活を手助けしてくれているみたいっす」

「なるほど。ペットとしてというより仕事の相棒って感じか」


 あっちの世界でも昔はそっちの方が多かったんじゃないかな。

 嗅覚とかスピードとか、人間よりも優れている点が多くあって尚且つ犬種や育て方次第ではあるが、主人には従順ときている。


 まさに相棒としてはうってつけの存在だ。

 

「野犬か……連れて帰るのは難しそうだな」

「ちゃんと可愛い子にしてよ!」


 そんな無茶なとは思いつつ、俺もここにペットがいてくれたらいいなぁとは思っている。

 ルナレナ様の要望に応えながらも自分も楽しむため、ログハウスで飼育するペット探しにも力を入れていこう。

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