第26話 帰路へと就く前に
楽しかった時間はあっという間に過ぎ去り、気がつくと周囲が夕日で橙色に染まる時間となっていた。
「そろそろ帰るか?」
「そっすね。荷物はほとんど積み終わったし、このまま――」
「ストップ!」
帰る相談をしていた俺と竜崎くんの間に割って入るルナレナ様。
「まだやり残したことがあるわ」
「やり残したこと?」
「えぇ……そういえば、あんたは初めてだったわね。こちらの世界へ来た時には欠かさず立ち寄る場所よ」
創造の女神であるルナレナ様が欠かさずに訪れるという場所。
それは果たしてどんなところなのか。
竜崎くんの運転するワゴン車の助手席で、俺は少し緊張する――が、目的地へはわずか三分で到着した。
「えっ? ここ?」
「そうっすよ」
たどり着いたのは道の駅のすぐそばにあるコンビニだった。
「あのおいしいミニパフェはこのコンビニでしか売ってないのよねぇ」
「は、はあ……」
「さあ、買いに行くわよ、ホーリス! 財布の準備はいいかしら!」
「もちろんっす!」
意気揚々とコンビニへ入っていく創造の女神と聖竜族の青年。
というか、竜崎くんの本名がホーリスっていうのすっかり忘れていたよ。
遅れて店内へと足を踏み入れると、これまでに見たことがないほど真剣な眼差しでアイスを吟味するルナレナ様の姿が目に入った。
どうやら竜崎くんから「アイスはひとつまで」と制限をかけられているらしい。
「定番で攻めるか……いや、ここはひとつ冒険をしてみるという手も……」
悩みまくる女神様は放っておくとして、俺も何か向こうの生活で必要になりそうな物がないかチェックしていく。
「スマホのバッテリーかぁ……向こうでもなぜか使えるし、持っておいていいかもな」
ログハウス内だとパソコンも使用できるし、ネットにもつながる。
謎が多すぎる空間だけど、そこは創造の女神による力のおかげか。
ちなみに、その女神様は購入するアイスを決定。
選んだのはソフトクリームタイプのもので、バニラとチョコがハーフになっている。
しかし、レジで会計をしているおっちゃんもまさかその相手が自分の暮らしている世界を創った女神とは思うまい。
傍から見たらジャージ姿の女子高生。
部活帰りに寄り道にしたのかってくらいの認識だろう。
「いやぁ、実に有意義な時間だった!」
お目当てのアイスを買えてご満悦の女神様。
俺もいくつかあっちの世界で使えそうなアイテムを購入できたし、よしとするか。
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