第19話 異世界の人間

 創造の女神ルナレナ様。

 聖竜族の竜崎くん。

 そして森の動物たち。


 異世界転移――と言っていいかは定かじゃないが、とにかくこれまで暮らしていたところとはまったく別の世界へとやってきた割に、俺の交友関係(?)は随分と狭いものだった。


 とはいえ、俺もそこまで社交的な性格じゃない。


 休みの日とか一日中家でネット漁りをしていても全然苦じゃない超絶インドア派だ。

 そりゃあ、最近になってキャンプという新しい趣味が出来てから外に出るようにはなったけど、相変わらず人付き合いはしないまま。ソロキャンプなら誰にも邪魔されずに楽しめるっていうのもあるから、かえって単独行動に拍車がかかっているのかもしれない。


 しかし、異世界の人間との交流ってなったら話は別だ。


 ルナレナ様の力で日本語は通じるらしいので、会って話をしてみたいのだが……どうも竜崎くんの表情が冴えない。


「あまりこちらの人間とかかわるのは賛成できないっすね……」

「どうして?」

「なんというか、価値観が誓いすぎるっすから」


 あぁ……それはちょっと分かるかも。

 ゲームとかマンガによる知識なので偏りがあるかもしれないが、竜崎くん曰くそこまでズレはないという。


「特に矢凪さんのいた日本という国は、あっちの世界の中でもトップクラスに平和な国っすからね」

「海外で真っ先に標的とされるのは日本人なんて話もあるくらいだからなぁ」


 住んでいる身としては実感ないんだけど、周りの評価的にそういう位置づけらしい。

 俺自身は海外旅行などをしたことがないのであくまでもネットやらの情報にとどまっているが、あながち的外れってわけでもないのだろう。


 少し落ち込んでいると、それが気になったのか竜崎くんがフォローを入れる。


「で、でも、こっちにもいい人はいるっすから! そういう人たちとなら交流しても問題ないっすよ!」

「私もそう思いますよ」


 とうとう異世界のシカにまで慰められてしまった。

 ……まあ、シカでこれほどお行儀が良いのだから、きっと人間の中にも優しくて話の分かる人はいるだろう。


「ところで、先ほどからあなた方の話を聞いていると、そちらの男性は別の世界から来た人間と受け取れてしまうのですが」

「そうっすよ」


 竜崎くんがあっさりバラしてしまう。

 いや、別にバラしてもいいのか。


「よろしければ、あなたの世界のことをもっと教えていただけませんか?」

「あぁ……今は仕事中なんですよね……」

「歩きながら話せばいいっすよ。ついでに森の案内役にもなってもらうっす。俺の知らない場所にも詳しそうだし」


 緩いなぁ。

 でも、だからこそやりやすいっていうのはあるが。


「お心遣いに感謝いたします。――そういえばまだ自己紹介をしていませんでしたね。私はロイゼンハルトと申します。以後お見知りおきを」

「あっ、これはご丁寧にどうも……矢凪隆也です」


 めちゃくちゃカッコいい名前のシカだった。

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