第17話 新たな出会い

 転移魔方陣を使い、昨日探索した地点まで戻ってきた俺たち。

 今日はここから調査再開となる。


「しかし、魔境の異変か……ちなみに、竜崎くんは何が起きているのか予想を発てていたりするのかい?」


 異世界素人の俺では皆目見当もつかないが、この世界で暮らしてきた彼ならおおよその目星をつけているんじゃないか――そう思っていたのだが、


「サッパリっす!」


 ……あてが外れたな。

 まあ、分かっていたらわざわざ俺を呼び寄せるようなマネはしないか。

 気を取り直して、周辺の調査を開始。


 相変わらず、ここだけなら日本の森と大差ないんだよな。

 見知らぬ植物やたまに喋る動物がいるくらいか。


 ……いや、改めて考えたらそれだけでも日本の森とだいぶ違う特徴だな。特に後者。


 しばらく歩いていると、竜崎くんが何かを発見したらしく「あっ!」と短く叫んで走りだした。


「ど、どうかしたのか?」

「このキノコうまいんすよ! 特にソテーは絶品っす!」

「キ、キノコか……」


 好き嫌いでは言えば、大好きな部類に入るのは間違いない。

 

ただ心配なのは……毒の有無だ。


 現代日本でも誤って毒キノコを口にして病院に担ぎ込まれ、挙句の果てには亡くなってしまうなんてニュースを耳にする。山に詳しい人でさえ間違えてしまうくらい色や形状が似ている種類もあるようなのでその点は不安だった。


「それは本当に食べられるヤツなのか……?」

「大丈夫っすよ。俺たち聖竜族は鼻が利くんで」

「鼻? 臭いで分かるのか?」

「そっすよ!」


 いや、「そっすよ!」って……でも、めちゃくちゃドヤ顔だしなぁ。よほど自信があるのだろう。ここはそれに乗っかってみるとするか。


「なら問題ないな。今晩が楽しみだよ」

「絶対に矢凪さんも気に入ると思うっす!」


 キノコについてアツく語る竜崎くん――と、その時、少し離れた場所から何やら物音が。

 昨日はクマと遭遇したが、今日は別の動物か?


 そう思って振り返ると、そこにいたのは――


「シカ……で、いいのか?」


 なんかめちゃくちゃでっかいシカ(に限りなく近い生物)がこちらをジッと見つめていた。

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