第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト

夏の野菜

短歌二十首『推しに焦がれて』

「好き」と言う「ありがとうね」と返される 距離の遠さを感じ切ない


現実の恋とはちがうと言われても同じ時代に生まれたわけで


「好きな人いる?」と聞かれていちばんに顔が浮かぶが名前は言えん


リアコとかそんなポップなもんじゃないもっとドロドロしている気持ち


バラエティ番組で見る推しの顔「よそ行きだな」と身内みたいに


推しがやる役に影響されるから好きなタイプが医者刑事ヒモ


美しい共演者とのツーショット2人をはばむアクリルはない


「結婚しようね」と釣ってくれるけどあなたのママの名前も知らん


ポメラニアンみたいな女の子だった君と撮られたインフルエンサー


清楚系が好きだったんじゃないの? よりにもよって金髪なんて


匂わせる女じゃないといいねって そもそも女がいるのが嫌だ


あたしなら何でもやってあげられる 野菜たっぷりスープも作る


君が食うミネストローネならあたし定規を使って切ると思うの


恋人がいたとしたって生きていてくれればいいと思う日もある


あんたさぁ、何年アイドルやってんの? その指にリングつけんと死ぬん?


薬の名前は教えてあげられん 責任取れないからねと言った


インスタで可愛い同担見つけた日 お菓子を我慢できたりしちゃう


「売れても変わらず近くにいるから」と近く感じたことはないけど


あなたが提示してくれるアイドルをそのまま受け取るファンになりたい


不幸にはならないでほしい だけどまだ幸せにだけならないでいて

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第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト 夏の野菜 @kanaaaa

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