第2話 主人公
目を開けるとそこには、王と王妃のような格好をした人と、兵士のような人たちがいた。周囲にはクラスメイトがいる。
「どこだよここ」
そう呟くと、王らしき人が口を開いた。
「此度はここに連れてきてすまない。君たちをここへ召喚させてもらった」
なんていうことを王らしき人が告げた。
そに対してみんなは意味がわからないという顔をしていた。
「どういうことなんですか?召喚って……異世界にでも召喚されたんですか俺らは」
俺がそういうと、
「ああそう通りだ」
と王らしき人が告げた。
そして、王らしき人から、話を聞いた。
話によると、本当に王様で間違いないらしい。
この世界は、人間と魔族が均衡を守って暮らしていたらしいのだが、新たな第三勢力が各地で猛威を振るってい
るとのことだった。
それを止めるために魔王軍と王国軍が共に戦ったのだが、惨敗。
困り果てた末、俺らを召喚したらしい。
最初は戸惑っていたクラスメイト達も終われば帰れるということでやる気になったみたいだ。
それぞれ、スキルを所持しているようで結構なチートを持っていたが、なぜか俺だけ『自作ソシャゲ』という言葉だけで、鑑定してもどういったものなのか、わからなかった。
漫画の世界なら、使えない勇者…ということで追い出されてもおかしくはないのだが、この世界の王様はどうやら相当温厚….人がいいらしい。
分かってからで良い、と言われた。
城に居てもいい、と王様に言われクラスメイトのほとんどが城を拠点としていた。
俺はというと、冒険してみたい(ソシャゲの参考にしたい)という名目があったため、ちょくちょく城に戻るということで王国を後にした。
そして城を出て数時間。
急に目の前に自分の作ったガチャイベント画面が出てきた。
そうして、今に至る。
草原で寝転がりながら、目の前に出現した板状のガチャイベント画面を観察する。
そもそも自分が作ったものとなぜ気付いたのか……それは背景やキャラが自分の作ったキャラだったからだ。
「……もしかして、『自作ソシャゲ』ってまさか」
半信半疑でポケットに手を入れる。すると、俺の考えが的中した。
ポケットの中から例のものを引っ張り出す。
「やっぱり……万能電子手帳」
これはソシャゲの主人公たちが使っているメニューを開く際に使うスマホのような手帳だ。これを使ってメニューが開ける。ちなみに略して『万電帳』と呼ばれている。というかそんな設定にした。
どうやら寝っ転がった時に偶然ガチャを開いてしまったようだ。(しかも大画面のせいで、空中に表示されたようだ)
それを閉じる。するとメニュー画面になった。
そしてメッセージアプリ(本来であれば物語が進むごとにキャラクターがメッセージを送ってきてクエストが受注される)に、新着が入っていた。
恐る恐る開いて確認してみると、そこに書かれていたのは、
『最高のスキルを君に 神より』
と書かれていた。
「神って誰だよ……?神とやらがスキルを付与してんのか?」
考えても答えは出ないし、誰も答えてくれない。
すると、万電帳がなり始めた。
これは俺が設定したものだ。何かしら称号獲得した際や、クエストが受注された際に鳴るような仕掛けになっている。
万電帳を開くと、ポストボックスに何かが入っていた。
見当はついているが……。
開いて確認すると、そこには初ログインプレゼント用の勇気の紋章×1600が入っていた。
というのも俺が作ったこのソシャゲは少々特殊で、
・結束の欠片
・魔法石
・高濃度エネルギーカプセル
・勇気の紋章
というものがガチャを引くために必要なもののメインとなっていて、
結束の欠片というのは、全てのガチャで使用可能の欠片。全ての世界のキャラや武器を結束させる力がある。
魔法石というのは、ファンタジー系ガチャの際に使う石。
高濃度エネルギーカプセルという長い名前のこれは、SF系を登場させる際に使う。
勇気の紋章というのは、主人公と関わりを持つ……つまりメインキャラ達を召喚する際に使用する。
まぁ、ほとんどの場合、ストーリーを進めていけば普通にメインキャラは手に入るので、このガチャを使うのは、キャラ強化用か、キャラ獲得が選択式の時、そして素材入手の時だ。
ただ、勇気の紋章は手に入りずらい。
「ちょっくら回してみるか」
今は初回限定で10連が11連になっている。
「まぁ、あのキャラとか出てくれないかなぁ……」
そんなことを呟きながらガチャのボタンを押した。
すると、キラキラとかがやき(俺が作った演出)、シルエット(人)が歩いている演出が入る。そして金色の光が万
電帳から出る。
「……………」
俺は冷や汗をかいていた。これは確定演出なのだ。確定演出だと、シルエットが出るのだが……(つまりシルエットがものだった場合、キャラクターは来ないが、星が高いアイテム、または武器が出る)。そのキャラクターが問題なのだ。
俺は、そいつを召喚する。
「まさか、召喚する側が召喚されるとはな………」
「…………主人公」
もちろん、この物語の主人公、俺ではない。
そもそも俺は主人公ではないけども。
———俺のソシャゲの主人公である。
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