~インディバル・デイ~ちょっと?変わった運動祭
灰狼
エピソードI なんだよその競技は?
「トラファルガー!起きろ!休みの日だぞ!今日出かけるんじゃないのか?」
トラファルガーを叩き起こしてとっとと出かけるらしいから支度をさせた。
これはまだローマ、マーキュリー、アルテミスがいない頃の話だ。
さて、そんなことは置いておいて、本題に入ると今年、四年に一度の運動祭が今年にあるらしい。
オリンピックに代わるものみたいだが、この日は武器を使わず、自分の腕前で勝負する日のようだ。
この日は何がなんでも殺し合いが禁止だ。まあ、競り落とし合いはオッケーだけどな。
と言うか運動会は学生時代だけじゃないのかよぉ〜…
さて、今年はまだ一度も経験したことないことをしに行くとしようか。もうここにきて一年が経つ。
早いもんだ。半年目でトラファルガーが入ってきて、おんなじ部隊に配属された。
まあ、元が同級生だからいいのだけれど。
「エース、いってくるぜ!」
「いってらっしゃい!」
トラファルガーを送り出して、私はついでに郵便受けを開けた。
中にあったのは日報と、新聞。そして何かわからない封筒だ。なんだこれ?
寮に戻って封を切ると、中から何かが書かれた紙が出てきた。
まあ至って普通だが、問題は内容だ。
なんだ?誰か死んだか?
『全国企業共同運動祭における今回の種目について。』
ああ、例のアレか。今回はサイクロン社主催みたいだな。
『今回の種目は陸上系、水泳、槍投げ、サッカー、野球、バスケットボール、ラグビー…』
まあ、だいたいわかる。ってちょっと待て、なんだこれ?
『機械乗術、レース。以上。』
機械乗術とレースってなんだよ?おい初めて行きたぞ?
レースはまだしも機械乗術ってなんだ?あ、説明がある。読んでみよう。
『アームドスーツを操り、所定のミッションを共同、または部隊ごとに遂行してもらう、
または個人で遂行してもらう競技です。』
うん、至ってシンプル…ってなるか!なんだよこれ、これは運動祭じゃなくないか?
んで、なんかもう一個あるな。なんだこれは?
『指名書グラビティ・タニティード・エース様
あなたは全国企業共同運動祭にて、バイクレース、陸上二百メートル走、
及び部隊型機械乗術の代表選手になりました。
代表として頑張ってください。』
は?誰がいったい決めたんだ…まあいいけどさ、なんで陸上もなんだ…もっと速いやついただろうに…
もういいや、決まったことは仕方ないさ。ところでもう一枚がさらにあったようで、見てみたが、トラファルガーの分だった。
彼もバイクレースと部隊型機械乗術の代表になっていた。
なったからには楽しむとするか。あと、トラファルガーにこの紙押し付けたらきっとひっくり返るぞ。
あいつのバイクは確かおんなじ車庫にしまってあるが、アルフォンス・アレクサンダーだったはずだ。
あれは1800ccV6ツインターボエンジン搭載の化け物だったな。
576馬力で車よりも馬力があるかもしれないやつさ。やばいだろ…
まあいいさ。私は封筒をトラファルガー机の上に置いて、そのまま昨日の支度を整えた。
そしてデッキに向かった。短い休みの始まりダァー。
自分のパーシュート三型の調整をし、リフレクターの出力を若干上げて、いろいろ細かな調整をした。
そんな時だ。
「エース。おはよう。今日は少し暑いな。」
「ああサンダース隊長。そうっすね。今日は相当暑いですよ。」
キラキラと金色の裾が輝く。ついこの間大佐になったばかりだが、何かあるのか?
まさか何かの会議でもあるのか?休日なんて言ってられんかもな。
「君はバイクレースに出るってね。俺はカーレースで出場するよ。」
なんだ、その話か。
「そうなんですか。私はそれ以外にもいろいろとやりますけどね。」
「忙しくなるけど頑張れよ。あと、トラファルガーにもいってほしいんだが、
今日訓練場でバイクレースの練習あるってな。ここから一ヶ月は戦闘予定が立ってないんだわ。
それもあの運動祭の影響さ。」
ああ。なるほど、だからあれだけみんなが休みで外で遊んでるのか。馬鹿みたいに今日も機体いじりとは…
とうとう社畜の仲間入りか?やめてほしいな…って私が止めればいいだけだけどな!
「なるほど。じゃあ私は調整済ませたらとっとと向かいます。」
「わかった。今からちょうど一時間後だ。間に合えよ。」
「今までで遅れそうになったのは新入りの二日目くらいですよ。今度の朝また雷管ぶっ放しましょうか?」
「いや結構。もうやめてくれぇ。」
なんだ、つまんないの。(コラ!)
その後なんやかんやで調整を済まし、あとは動かすだけになった。パフォーマンス重視から防御、安定重視にした。
ペガサスに跨り、エンジンをかけた。相変わらずご機嫌な音を出しやがる。
そのまま約束の場所に到着し、準備を済ませた。ペガサスも喜んでいる。久しぶりにまたマジな走りをするからな。
「あなたがエース大佐ですか。よろしくお願いします。おんなじチームのホークモンです。」
「ああ、こちらこそ。ところでホークモン、トラファルガー知ってるか?」
彼は一回見渡して、そのあと口を開いた。
「彼はまだきてないみたいです。待ちましょう。」
「ありがとう。」
私は彼に少しお辞儀してどんなバイクがあるかを見てみた。
だいたいがガローニの新型か、アルフォンスのエンパイアあたりだ。いいバイク持ってるねぇー。
おっ、あれは新型で最速のレーサーバイク、エクトスパズムじゃないか!いいもの持ってるな。
初めて見るが、だいぶスポーティーにまとまってるな。かっこいいな。
ただ、自画自賛だが、私のものが一番だ。
「エクトスパズムとは、なかなかいいバイクですね。」
「おお、ありがとうよ。って、一年前に一緒に訓練したエースさんじゃないですか!」
まさか面識ありとは。申し訳ないど忙しすぎて覚えてないけどね。
「じゃあ面識あるってことか。」
「そうですよ!またここで会えて嬉しいです!!」
そこまで喜ぶのは想定外だがいいことだ。ただ、自分よりもし下でもなく、同い年なのにこれほど言うとは…
いったいどんなインパクトがあったと言うんだ?
「ところでエースさんは何に乗ってるんですか?」
「私か?」
私は自分のバイクの方を向いた。そして赤いラインが綺麗に入っているボディーを見つめた。
「あのバイクだ。約何十年も前に生産されてからわずか一年で消えた幻のバイク、
アルフォンス・ペガサス950だ。」
彼は目を丸くしていた。それも無理ない。なにせめちゃくちゃレアなのにちゃっかり親父が持ってたバイクだからな。
それに、まだ状態としても新しい方だ。そりゃあ何十年前のものとは誰も思わないさ。
「ま、まさか、アルフォンスの中でも最も鬼才とも言われるあのペガサスに乗ってるんですか!?」
「そうだよ。あいつは本当に生き物だよ。機嫌の良し悪しで全然走りが違う。愛想があるね。あいつには。」
「今乗ってても特に壊れたりとかは…?」
「まだない。定期的なオーバーホールは欠かせないがな。
それくらいしてあげればもう三万キロ近く走ってるが問題ない。」
彼はまた目を丸くさせていた。まるで初めて電車を見た小さな子供みたいだ。熱い興奮に浸ってる。
しばらく眺めていると、彼は口を開いた。
「そうだ!よかったら練習までに時間あるので、レースしません?軽く山走って帰ってきましょうよ。」
それは練習でいいだろう…ってかトラファルガーはどうした?
「まあいいが、練習でもいいじゃないか。」
「そうっすね。」
そうして私はペガサスの方に歩き、問題がないかをチェックしてるとV6のエンジン音が聞こえる。
トラファルガーめ。やっときたか…
「わりぃ、遅くなったわ。」
「あと少し遅かったら放っておいて練習してたぞ。まあ、幸運にもまだあと三分はある。
とっとと準備を済ませておいた方がいいぞ?」
「んなもん知っとるわ!」
そうして彼は急いでバイクを所定の場所に停めて荷物を置いて、準備を済ませた。
そして終わった頃にアナウンスが入った。
『今から練習を始めますよ!各部隊ごとにまとまって、その後、少ないところは各自で組んでください!』
「トラファルガー、とりあえず私含めて三人しかいない。一人足りないな。」
「そうだな…どーする?」
少し考えた。ホークモンはエンパイア、トルク重視だ。トラファルガーは直線番長、私はコーナリング、あとは…
あっ!
そうだ、あの訓練生を呼ぼう。エクトスパズムなら最終戦においてアドバンテージを取れる。
「ああ、君、うちのチームに来ないか?」
「私でいいならいいですよ!」
「ならよかった。よろしく頼む。ところで名前は?」
「ガウスです。」
そうしてチームができた。さて、練習を始めようか。種目はリレー戦。
場所はそれぞれ未舗装山道、高速道路、峠、そしてサーキットとなっている。
未舗装とはいえど、スーパースポーツでも走れる程度だ。なんとかなる。
走順はある程度決めていた。ホークモン、トラファルガー、私、そしてガウスの順で行く。
それにしてもうちのチームはだいぶちょうどいい配分だな。他もいいが、私たちはその中でも特にいい感じだ。
さて,走るとするか。山道担当の他のチームのバイクを見る。ペガサスなんていないなぁ…
って,なんだあれ?まさかあれってフューチャーアーキテクトか?!
あんなところにアルフォンステクノロジーのお偉いがいるとはな。
この前発表されたばかりのコンセプトをいきなり使うのか。
さすがは鬼才兼浪漫企業だ。私ら大企業には真似できない芸当だ。
じゃあスタートしますか。
そう思った時、横から雷管二丁持った人が出てきた。あれはあの時の私に似てるな。
「位置について!用意!」
引き金に手がかかる。そして今、引かれた。
パァーン!!!!
一斉に走り出したが、道が狭い。
そして譲り合いの精神で言ったら下から数えた方が早い順位だ。
軽く言って、やばい。
ただ、そこまでみなさんまだまだ攻めきれてないようだ。私は着々と順位を上げた。
そのまま羽ばたいてくれ。頼むぞ。
そして中盤までに三位のポジションになった。ここからは技量勝負だ。
二位はエクトスパズム、そして一位はやはりあのアーキテクトだ。
大きな差ではないが、厳しい差ではある。
だが、まだまだ中盤だ。ここから取れるものは全て取るとしよう。
馬力勝負である直線では歯が立たないが、コーナーとラインどりについてはこっちにアドバンテージがある。
ゆっくり確実に差を埋める。
テイルトゥーノーズだ。タイヤとタイアがすぐ近くだ。
スリップストリームも十分だ!
今だ!行け!!
コーナーのインサイドに一気に飛び込み、そのまま立ち上がりで抜いた。
あと一機だ!!がんばれペガサス!!
ただ、相手はさすがだ。しっかりとアーキテクトの特性を活かしてフルスピードでドリフトしてやがる。
バケモンだなぁ…
ただこっちは相手より重量で勝る。立ち上がりは有利だ。ゆっくりラインの優先権をとっていく。
相手はV8エンジンの化け物だが、こっちはツーストのスーパーチャージャーだ。
舐めてもらっちゃあ困る。こいつが買われたのは三十年前だかなんだか知らないがまだ現役だ!
唸れ!三気筒!!
甲高いエンジン音が槍の如く響く。
爽快だ。
テイルトゥーノーズ!!
アウトから抜く用意をするが、ここでフェイントを仕掛ける。一気にこのあとインに入る。
コーナーが近づく。
もうあと三百メーター!!
あと少し…
よし!
今だ!!
リアブレーキを踏みバランスをとりながらインをつく!
相手がアウトに寄った瞬間…
鋭く内側から抜いた。
立ち上がりはこっちの方が強い!!いける!!
一気に立ち上がり、そのままツーストの強みとも言える超加速を魅せた。
こっちが相手を引き離し、そしてまたコーナーで差をつけた。
その差はコンマ数秒かもしれないが、重要なアドバンテージだ。
そろそろ山頂が近づく。そしたらそこで一気に切り返して戻るのだが、ルートが若干違う。
直線が少し多いゾーンを走らなければならないが、意外と短く、十キロもない。
さらに、最初の方は険しいため、差をつけるならそこしかない。
さて、山頂の切り返し地点に来た。普通ならUターンが普通だが、そんな時間はない。
私は一気にアクセルを上げて、そのままクラッチを切った。
リアブレーキを限界まで一気にかける。
ドリフトターンだ。
そしてペガサスは土埃を上げて一気に車体を反転させた。その瞬間を見逃さなかった。
クラッチを繋ぎ、アクセルを一気に限界まで上げる。
これで相手とは三秒以上離した。後ろには見えない。
このまま行くとしようか。
あとは自分のラインを綺麗になぞる。このまま峠を攻める。
そうして五キロくらい走っただろうか。直線が多いコースになった。少し曲がったら直線…そしてまた直線…
と、かなり不利な状況に陥った。その時だった。後ろにアーキテクトが見える。
もうすでに二秒差を切っただろう。
まずい。
非常にまずい。
だがあと二キロもない。これなら…
そして最終コーナーを曲がり、そのままフル加速する。あとはここをまっすぐ飛ばすだけだ。
少しは曲がってるが、これはコーナーとは言えない。
残り一秒差を切った。あと一キロ以下!!
テイルトゥーノーズの始まりだ。
こちらはひたすらラインを妨害して、抜かれることを防ぐ。
しかし!相手は私の横についた!!
ゴールが見えた!!あと少しだ!!
頼む!!
左後ろには抜きにかかるアーキテクトが見える。
そしてゴールする寸前、私たちは並んだ。どっちが勝つんだ?!
そのままゴールイン。
勝者は一体?
「お疲れ様。どっちが勝ったんだ?」
「わからんな。」
彼もわからないようだ。数ミリの差だろう。
その後全員がゴールし、放送が流れた。
「接戦お疲れ様でした!今回の勝者はアルフォンス…」
どっちだ?
頼む!
「ペガサスを駆るグラビティ・タニティード・エースです!!」
おっしゃァァァァァァァァァァァァ!!
まじで嬉しい!!!!!!
あれだけの接戦を繰り広げての一位はまじで嬉しい!
だが、戦ってくれた人には感謝しかない。何せ彼らがいなければゲームは成り立たないからな。
「ああ、惜しかったな。だが、楽しい勝負だった。ありがとよ。」
「どういたしまして。私も楽しかったです!それに、またいつか機会があればやりたいですね。」
「君の操るペガサスは速いよ。コンセプトモデルだろうと、勝てないよ。」
「ありがとうございます!」
そうして練習試合を終えた。その時、ちょうどトラファルガーが帰ってきた。
「やったぜ!!一位は取ったぜ!!」
「まじか!」
V6のエンジン音がよく響く。大体車並みの馬力を誇るのに重量は全然違うからな。
今にも飛べそうなバイクだな。
「にしてもすごいじゃないか!トラファルガー!」
「ヘヘッ。ありがとよ。ところでエースはどうだった?」
「私は激戦と接戦の末、一位だ。」
「エースもなんやかんやすごいや。」
そしてしばらく待つと、なんだあれ?世紀末か?
そう、泥だらけになったエンパイアだ。
「エース大佐ぁ…一位は取れたんですけれども…」
けれどもどうした?まさか転んだか?
「あんなコースをこんなスーパースポーツ単気筒に走らせるとかあなたどうかしてますよぉ。
二度はやりたくないですよ…」
「ああ…だから世紀末化したのか…どえらいことだな。そりゃあ難儀だな…」
元の黒色がない。ぜーんぶ土色。
なんだそりゃぁ…
そしてホークモンのおそらくは新品であろうブーツと革ズボンも壊滅。
あー…
うん。お疲れ。
そうしているとエクトスパズムが返ってきた。
「エース大佐ぁ!やりましたよ!一位とりました!!」
「よくやったガウス!!おめでとう!!」
「…ところで、ホークモンさんって転んだんですか?」
「ああ、そのことだが…」
さっき言ってたことを一応全部きっちり伝えた。
「ああ、それは大変でしたね…」
「そうなんですよぉ〜。ほんと誰でしょう?オフ車じゃなくてスーパースポーツで走らせた輩は?」
私だ。ごめんて。
「まあいいじゃんか。みーんな一位ならそれでいいじゃないか!よし!今日は帰って明日に備えようぜ!!」
「そうだなトラファルガー。あと、先言うぞ…私は寝るからな!!帰ったらな!!」
「珍しいなぁ、エース。何があった。」
「レースすると体力と神経使うんだよ。だから今日早く寝ないと多分明日はぐったりだ。」
「そうか。わかったぜ。じゃあ今日俺らは解散!」
「わかりました!!」
「洗車してこよう…」
そうして私は帰路につくわけだが、凄まじく疲れた。だからちょっとフルスピードで帰ることにした。
アクセルフルで回して帰った。気持ちいい風が顔に当たる。
トラファルガーを置いて行ったが、まあいい。彼ならどうにかなる。
そしてバイクを片付けて、風呂に入ったらトラファルガーが帰ってきた。
「疲れてんだろ?早く寝てな。俺が日報書いとくわ。」
「ありがとう。」
そして私は寝支度整えて布団にくるまった。
今までにないほど布団が気持ちいい。さあ、おやすみぃ!!
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