ひよりさんとクラスのみんなと遊びに行こう!
第41話 尾上の奴、浮気してやがるな!(仁秀視点)
(くそっ、どうしてこんなことに……!?)
GW最終日、俺は少し前に想像していたものとかけ離れた連休を過ごしている自分自身の現状に苛立ちを覚えていた。
本来ならこんなことにはなっていないはずだ。この連休中に行われたバスケ部の練習試合で大活躍してレギュラーの座を不動のものにし、たくさんのファンを作って、モテモテになる予定だった。
最終日の今日は彼女の二奈とオフを楽しんで、練習試合で活躍した俺にもっともっとメロメロにさせるつもりだったんだ。
それなのに……今の俺は、試合に出場するどころかバスケ部の練習にすら出ずにサボり続けている。
そのせいで折角のオフだっていうのにマネージャーをやってる二奈を遊びに誘いづらくて、ひとりであてもなく街をぶらつくという寂しい連休最終日の過ごし方をしていた。
(全部、全部……クソ尾上のせいだ! あいつが俺のひよりを奪うから、俺からひよりを寝取りやがったから、こんなことに……っ!)
俺がこんなに寂しい連休を過ごすことになったのは、全部尾上のせいだ。
あいつが俺からひよりを寝取ったせいで、こんなことになっているんだ。
俺にだって多少は悪い部分はあったとは思う。だけど、俺と喧嘩して傷付いたひよりの心の隙を突いて、あいつとセックスするところまでいった尾上はやっぱりズルい。
あいつと付き合い始めてからひよりはどんどん尾上好みの女に変えられていて……それを間近で見させられる幼馴染兼元カレの俺の苦しみは、尋常なものではなかった。
そのせいで俺は調子を崩し、仲間からの信頼も失って、こんなことになっている。
俺の現状は全て……クソ寝取り野郎の尾上のせいだ。
(このままやられっぱなしで終われるもんか! 絶対、あいつに復讐してやる! ひよりも奪い返してやるんだ!)
無論、俺はこのままで終わるつもりなんかない。NTR本に出てくる、彼女を奪われたままの情けない男みたいになってたまるか。
どうにかして尾上を叩きのめし、ひよりを奪い返してやる。絶対に……このままにしてなるものか。
ただ、どうやってあいつに復讐するか? 肝心なその方法は何も思い付かずにいる。
暴力に打って出るのは論外だし、かといって言葉で攻撃しようにもネタがない。
それでもどうにか尾上からひよりを奪い返したい俺が必死にその方法を考えていると……?
「ん? あ、あれは……!?」
ぶらぶらと街を歩いていた俺は、先を歩く一組の男女の後ろ姿を目にして、はっと息を飲んだ。
間違いない、あれは……憎き尾上じゃないか!
一緒にいるのは確か、ひよりと仲のいい女子だ。何度かあいつの様子を見に行った時、楽しそうに話している姿を目撃したから間違いない。
その女子と尾上が、二人きりで歩いている。楽しそうに会話しながら街を往く二人の姿を目にして驚いていた俺は、全てを理解すると共に興奮気味な笑みを浮かべた。
(そうか、尾上の奴……ひよりだけじゃ飽き足らず、他の女と浮気してやがるんだな!?)
連休の最終日にこうして二人きりでどこかに出かけているんだ。間違いなく、あれはデートだろう。
ひよりという彼女がいながら、他の女とデートに出かける……これはどう考えても浮気以外の何物でもない。
考えてみれば、寝取り男である尾上がたった一人の女と付き合うだけで満足するはずがない。
ああやって他の女に手を出して、抱ける女を増やそうとするのが自然だ。
名前は憶えていないが、今、一緒にいる女子も顔はかわいいし、胸もひよりほどじゃあないが大きい。
ひよりに飽き始めた尾上は気分転換にあいつの周囲の女も抱いて、自分のものにしようとしているに違いない。
(チャンスだ、チャンスだぞ! 尾上が浮気してることを知ったら、ひよりだって目を覚ますはずだ!)
尾上が浮気をしている、しかも自分と仲のいい友達とそういう関係になっていると知ったら、流石にひよりだって目を覚ますはずだ。
俺が浮気していてショックだったところを尾上に付け込まれたんだから、今度は俺があいつの浮気を利用してやる。
尾上の浮気を知って傷付いたひよりを俺が慰めて、元の鞘に収まる……完璧だ。完璧な流れだ。
そう考えながらこっそりと尾上を尾行した俺は、あいつらがデートでよく使う定番の複合レジャー施設『れじゃすぽっ!』の中に入っていく様を目にして、パチンと指を鳴らした。
(間違いない! やっぱりあいつ、浮気してやがるんだ!)
偶然、出くわしただけだとか、ちょっとした買い物だとか、そういう理由であんな場所に行くはずがない。
完全にあいつらはデートの予定を立てて、あそこに遊びに行った。ひよりと付き合っていながら他の女とデートに出かけてるんだから、間違いなく尾上は浮気をしている。
決定的な現場を目撃した俺だが、惜しいことに興奮し過ぎていたせいでその場面の証拠写真を撮り忘れていた。
ここで証拠を掴めていれば、尾上の弱みを握れたのに……と考える俺であったが、今回はひよりを奪い返す希望を見つけられたからよしとしよう。
(見てろよ、尾上……! お前の悪事を暴いてやるからな!)
尾上に復讐もできる上にひよりを奪い返せる、こんな素晴らしい方法が見つかるだなんて、俺はツイてる!
もしかしたら神様が可哀想な俺が寝取り男の尾上を倒せるように手助けしてくれたのかもしれない!
上手くいけば、あいつに騙されていたひよりや他の女子たちからも感謝されて、今度こそモテモテになれるかもしれない……と考えた俺は、たくさんの女子たちに囲まれる自分の姿を想像してニンマリと笑みを浮かべる。
とりあえず今日はここまでにして、連休明けから本格的にあいつの弱みを探ることにした俺は、一発逆転の機会を得られたことに胸を弾ませながら、スキップで自宅まで帰っていくのであった。
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