絶対にこのままじゃ終わらせないからな……!(仁秀視点)

「お、尾上の奴、ひよりと親し気にしやがって……! 寝取り男のくせに、よくも、よくも……っ!!」


 ある日の放課後、俺は二人で何処かに出かけるひよりと尾上を尾行し、学校から何駅か離れたショッピングモールへとやって来ていた。

 地元の面子からも人気のスポットであるここには色んな店や遊び場があって、友達同士で集合する定番の場所となっている。


 そんなところに、あいつらは二人きりでやって来た。

 つまりはデートだ。ひよりと尾上は、デートのためにこのショッピングモールに来たんだ。


 悔しい。苦しい。つらい。ほんの一か月前までは俺がひよりの彼氏だったのに、今や尾上がそのポジションに収まっている。

 ちょっと隙を見せただけでひよりを寝取られてしまったことが、苦しくて悔しくて仕方がなかった。


(俺とひよりは幼馴染でもう一年も付き合ってたのに……! 本当なら俺が先にひよりとヤるはずだったのに……!!)


 俺とひよりは十数年の付き合いがある幼馴染で、一年も付き合っていた恋人同士だったはずだ。

 本来ならばひよりとキスをするのも、あの胸を揉むのも、ヤるのだって……尾上ではなく俺だったはずなんだ。


 確かに俺にも悪い部分はあったと思う。だけど、やっぱり尾上はひどい。

 ひよりが弱っているところに付けこんで、上手いことやって、たった一か月程度でセックスまで持ち込んで……こんなの、エロ漫画の寝取り男のムーブそのものじゃないか。


(クソッ! このままじゃひよりが尾上好みの女に変えられちまう! どうにかしなくっちゃ……!!)


 歩く度にぴょこぴょこと揺れるひよりの髪を……ツーサイドアップに纏められた髪の毛を見つめながら、拳を握り締める。

 俺と付き合ってた頃は普通のショートボブだったのに、尾上と付き合ってからあいつにそそのかされて髪型を変えたひよりを見ていると、頭がガンガンと痛んで仕方がない。


 尾上はああいう小さなところからひよりを変えていくつもりなんだ。ここからもっと、あいつを変な女にしていくつもりなんだ。

 髪も派手な金髪に染めさせて、全身もガングロみたいに日焼けさせて、目立つ位置にタトゥーなんかも入れて……そういう女に変えていく。


 いや、もう既にひよりの性格は尾上のせいで変えられていた。

 あんなに優しかったひよりが、もう俺に二度と近付くななんてひどいことを言うはずがない。


 全部尾上のせいだ。あいつさえいなければ、ひよりは変にならなかったんだ。

 早くひよりの目を覚まさせてやらなくちゃ! あいつの人生が尾上に滅茶苦茶にされる前に、俺が助けてやらなくちゃダメなんだ!


 そのためにもまずは情報を集めるべきだ。そのために、俺はこうして二人を尾行している。


 今日もバスケ部の練習があったが、そっちはサボった。

 どうせ俺は今度の練習試合には出られないし、幼馴染の人生がかかっているんだからこっちを優先するのなんて当たり前だろう。


 ひよりと尾上がどんな付き合い方をしていて、どんなデートをするのか、この目でまずは確かめるんだ。

 それに、もしかしたらここですごい弱みを握れるかもしれない。高校生の身分でラブホテルとかに行ったら、その場面を撮影して証拠にしてやるんだ。

 そうすればひよりも尾上も、俺には逆らえなくなるはず……尾上をひよりから引き離すことだってできるはずだ。


 絶対にこのままで終わらせるもんか。寝取り男の完全勝利エンドなんて、死んでも認めない。

 ひよりを尾上の手から奪い返してやると固く心に誓いながら……情報収集と弱みを握るために、俺は二人を追いかけていくのであった。

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