第37話 傍にいる。君を絶対、幸せにする

 昇降口を抜け、階段を上る。長いようで短い廊下を歩き、教室の扉を開ける。

 見慣れたいつも通りの景色、普段通りの学校……何の変哲もない一週間の始まりだが、全く変化が起きない日常なんて存在しない。


 教室のドアを開け、自分の席に向かう途中、僕はきゃいきゃいと騒ぐ女子たちを目にした。

 その中心に、会って話がしたいと思っていた女の子がいることに気付いた僕へと、その女子たちが声をかけてくる。


「あっ、うわさをすれば……! おはよう、尾上くん!」


「ほら、ひより! 尾上くんが来たよ!」


「わかってるって! 変な雰囲気にしないでよ、もう……!!」


 僕が何かを言うよりも早くにひよりさんを引っ張ってきた女子たちがにやにやと笑いながら僕たちから距離を取る。

 何かを楽しんでいるような彼女の態度の意味は、前に出てきたひよりさんを一目見ればすぐに理解できた。


「あ、えっと……おはよう、雄介くん」


「おはよう、ひよりさん。髪型、変えたんだね」


「う、うん……! ツインテールっぽくしようとしたんだけど、ちょっと足りなかったからさ。ツーサイドアップにしてみた」


 耳の少し上の髪の毛を纏めた、普段のショートボブとは少し違う髪型。

 その髪を括るのに使っているのは先日のデートで僕がプレゼントしたあのヘアゴムで、言葉通りに大切に使ってくれていることを知った僕の口元にはついつい笑みが浮かんでしまう。


「ど、どうかな? 個人的にはちょっと子供っぽいかなって不安なんだけど……」


「そんなことないよ。かわいいし、似合ってる」


「ほ、本当? えへへっ、良かった……!」


 ほんの数日前に会った時と違う姿を見せてくれたひよりさんが、嬉しそうにはにかむ。

 僕も彼女に微笑みを返す中、先ほどまで彼女と話していた女子たちが話に混ざってきた。


「良かったね、ひより! 尾上くん、気に入ってくれたみたいじゃん!」


「ロリっぽくてかわいいよね~! でもまあ、ロリにはない爆弾が二つも付いてるわけですが」


「からかわないでって! 別にそういうんじゃないんだからさ!」


「本当に~? なんかもう、隠し切れない雰囲気が漂っちゃってるけど~?」


「本当だってば! あたしと雄介くんはただの友達です!!」


「……と、七瀬被告は主張していますが、尾上くん的にはどうですか?」


 まるでインタビュアーのように僕に聞いてきた女子に、少しだけ気圧されてしまったが……すぐに咳払いをして、気を取り直す。

 そうした後で期待に満ちた彼女たちの視線を浴びながら、苦笑混じりに僕は答えた。


「ひよりさんの言う通りだよ。僕たちは、ただの友達です」


 嘘偽りなく、僕たちの関係を伝える。

 とても不思議で言葉に出すには難しい僕たちの関係は、多分そう表すのが一番だと思う。


 ただ……そこにはこの一言も付け加えておくべきだと考えた僕は、少し落胆している様子の女子たちに向け、笑みを浮かべながら言った。


「――、ね」


「おっと!? おおっとぉ~っ!?」


「今はまだ!? とんでもない爆弾発言じゃん!!」


「ゆっ、雄介くんっ!? ちょっと、何言って――!?」


 僕の発言を聞いて、一気に騒ぎ出した友人たちの反応を見て、ひよりさんは顔を赤くして慌てている。

 それ以上は何も言わずに肩を竦めた僕のことを、ひよりさんは恨めし気に……だけど、少しだけ嬉しそうな目で見てくれていた。


「ホント、あんなこと言って……! 二人から質問攻めに遭っても知らないからね?」


 頬を膨らませながらも、笑みを浮かべてそう言ってくれるひよりさんを見つめながら、僕は誓う。

 このという関係がいつ終わるのかはわからない。だけど、その日までもその先も、僕は彼女のことを――。


「……ねえ、ひよりさん」


「ん? なに?」


 女子二人が盛り上がってこちらの話を聞いていない隙を突き、僕はひよりさんに声をかける。

 きょとんとしながら僕を見上げてくる彼女へと、僕は自分自身に誓ったことを伝えた。


「幸せにするよ、絶対に。ひよりさんが、ずっと笑顔で居続けられるように」


「……!!」


 僕のその言葉に、ひよりさんが目を丸くして驚く。

 視線を逸らし、頬を赤らめた彼女は、小さな笑みを浮かべながら小さな声でこう返してきた。


「今のって、なんか……プロポーズみたいだね」


 言われてみればそうかもな、と思った僕がそれをごまかすように笑う。

 同時に、今の約束を嘘にしないようにこれからも彼女と歩き続けようと……ゆっくり、少しずつ、お互いを知っていこうと思いながら、僕は大好きな人の笑顔を見つめ続けるのであった。




―――――――――――――――


ここまでこの小説を読んでくださってありがとうございました。

『ちっちゃくてデカくて可愛いのに浮気されてた七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする』……第一章閉幕です。


自分の趣味をぶち込んだチャレンジのための小説がこんなに沢山の人たちに読んでもらって、日間ランキングの1位まで取れちゃうだなんて予想もしてなかったので驚いています。

同時に、本当に嬉しいです。この場を借りて、感謝の気持ちを伝えさせてください。


皆さんの感想や応援のメッセージが本当に励みになっていました。

投稿を開始した時点で既にここまでは書き終わっていたのですが、やっぱり嬉しかったです。


続きに関してなのですが、考えてはいます。

ただ、書きたい物が多過ぎて悩んでいる状況です。


水着回も書きたいし、新入生キャンプみたいな学校行事でのお泊まり会も書きたい。

体育祭や文化祭のような学校行事もひよりさんの家族を巻き込んだお話も、ほとんど出番のなかった浮気女(二奈)のお話(ざまぁ)なんかも書きたい……となっていて、だからといって全部を脈絡なく書くとしっちゃかめっちゃかになってしまうだろうから、その流れを考えなければなと思っています。


あとはシンプルにお仕事がいっぱいあるので、そっちを頑張らなくちゃいけないなと。


ただ、ここで更新が途切れるわけではなく、明日からは1章を書くにあたってボツにしたネタを再構成した短編を投稿していきます。

流石に一日二話投稿は無理ですが、もう少しは楽しんでいただけるかもしれません。


改めまして、ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

また続きが書き上がりましたら投稿していこうと思います!

皆さんが見たいと思うシチュなんかも聞かせていただけると嬉しいです!(嬉しいだけで採用できるとは言ってない)


最後に……身長差ラブコメとロリ巨乳ヒロインっていいよね!

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