第41話
「絆月、一応言っておくけど、俺は一緒に寝たりしないからな?」
「……なんで?」
俺の言葉を聞いた絆月は何故か不思議そうにそう聞いてきた。
なんでそんな不思議そうな顔ができるんだよ。
「なんでって、俺たちが異性だからだよ」
変に誤魔化すような言い方をしても、絆月が相手だと意味が無いと思った俺は、正直に、そして素直にそう言った。
「昔は一緒に寝てたりもしてたし、別に大丈夫でしょ?」
「……大丈夫な訳ないだろ。お互い成長してるし、そもそもの話、絆月だってこの前俺が寝ぼけてた時、照れてただろ! それは大丈夫じゃないって事じゃないのかよ」
確かに昔一緒に寝たりしてたことは否定しないけど、お互いもう成長してそんなことが普通にできるような歳じゃないんだから、俺はそう言った。
実際、俺が言葉にしている通り絆月だって恥ずかしがってたんだから、ちゃんと大丈夫じゃないってことを理解してる上で絆月はこんなことを言ってきてるってことになる。拒絶……と言うか、素直に頷くはずがない。
……百歩譲って、これが完全に純粋な言葉だったのなら、俺も少しは言い方を考えたかもだけど、そんなことは全くないんだから、もう突き放そうとしている訳では無いとはいえ、言葉を気をつける必要なんて無いはずだ。
「……大好きな慎也にあんなことをされて、照れないわけないじゃん。……恥ずかしいけど、それを我慢できるくらい、私は昔みたいに慎也と一緒に寝たいの」
……そう心の中で考えた俺は、絆月が何を言ってこようと一緒に寝ることだけは拒絶しようと考えていたのに、そんなに顔を赤くしてそんな事を言われたら、こっちの方が恥ずかしくなってきて、拒絶しなくちゃならないのに、言葉が出なかった。
…… 絆月の様子がどうしようもなく可愛いと思うと同時に、断らないと、という思いが俺の中で渦を巻くよように回っていた。
……やっぱり俺は絆月が好きなのか? いや、でも、仮にそうなら、なんで俺は絆月と一緒に寝ることを断ろうとしてるんだ? 絆月のことを好きなんだとしたら、晴れて両思いなんだから、一緒に寝るくらい、全く問題なんてないだろう。
……なんで俺は自分の気持ちが分からないんだ? 本当に、嫌になる。
よく考えろ。
絆月は本来なら絶対に知っているはずのないことまで俺のことを知っている。
そのことに対して、俺はシンプルに怖いと思った。
でも、嫌だとは思わなかった。
家に勝手に入られた時も、怖いとは思ったけど、本気で嫌だとは思わなかった……気がする。
「絆月、今言うようなことじゃないのかもしれないけど、自分の気持ちがブレないうちに伝えさせてくれ」
「……え? う、うん。なに? 慎也」
「絆月、好きだ。一度突き放して、三年も避けてた俺がどの面下げてそんなこと言うんだって感じかもしれないが、俺は絆月のことが好きだ」
勢いに身を任せてしまった感はある。
でも、多分、俺のこの気持ちは間違ってないはずだ。……直感だけど、明日になったらまた分からなくなってたと思うから、今言うしかないと思ったんだよ。
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