幼馴染が依存体質なラブコメ世界の主人公に転生したから、どうにかしようと突き放したら突き放したで取り返しのつかないことになってしまった
シャルねる
第1話
「本当、あの二人は仲がいいわよねぇ」
俺の幼馴染……
それと同時に、俺は俺にくっついてきているまだ12歳くらいの桃色の髪の毛をした絆月を見ながら、思い出した。
あれ? もしかしてだけど、俺、転生してない? この子、めちゃくちゃ主人公に依存するキャラじゃないか?
「慎也、大丈夫?」
「え、あ、うん。大丈夫だよ」
しかも、俺が主人公なんだよな。
……物語を読んでいる時はあんな美少女が自分に依存してくれるなんて、なんて羨ましいんだ! と思いながら読んでいたけど、実際に主人公になると、なんか、違う。
依存なんてさせるより、普通に自立させてあげるべきだ、と俺は思う。
幸い、まだ俺たちは12歳だ。
今の様子を見る限り、もう絆月は俺に依存しかけてるように見えるけど、まだ依存しているわけじゃないと思う。
つまり、まだ間に合うんだ。
「絆月、取り敢えず、少し離れようか。近すぎるからな」
「……え、なんで……?」
そう思って、俺はそう言ったのだが、絆月は明らかに12歳の女の子がするような表情じゃない絶望したような表情を浮かべ、そう聞いてきた。
……待って、これ、俺が思ってるより、結構もう依存されてるのかもしれないぞ。
これは、絆月には悪いけど、荒治療をした方がいいのかもしれないな。
そう思いつつ、その時間は普通に過ごした。
そして、家に帰った時、多分、俺は慎也として、初めてのわがままを親に言った。
内容は簡単で、絆月と違う中学に行きたい、という話だ。
当然驚かれたが、このままじゃ絆月のためにならない、と言ったら、苦しそうな顔をしながらも、俺が決めたことなら、と頷いてくれた。
次の日、俺は絆月にそのことを伝えるために、絆月の家の前に来ていた。
隣同士の家なんだ。簡単に来れる。
「慎也っ!」
扉を開けてくれた絆月は嬉しそうに俺の名前を呼んで、抱きついてきた。
これも、絆月の為だ。
「絆月、昨日も言ったけど、離れてくれ。……今日は大事な話をしに来たんだ」
今は辛い思いをするかもだけど、将来的にずっと俺に依存するよりは、ずっといいことだろうと思って、俺は心を鬼にする。
「大事な話?」
絆月は全く離れる様子を見せることなく、そう聞き返してきた。
「俺、絆月とは違う中学に行くことにしたんだよね」
「……え?」
唖然とした絆月の声が聞こえてきた。
慎也として生きた記憶が、思わず絆月を抱きしめそうになるけど、それを必死に我慢する。
「……それだけ、だから」
俺はそう言って、上手く絆月から離れた俺は、そのまま自分の家に向かった。
「ま、待って! な、なんで? 私が、何かした? だったら、謝るから、待ってよ! 慎也!」
後ろからそんな悲痛な声が聞こえてくるけど、それに反応することはなく、家の中に入った。
……俺は、間違ってるのか? この体の年齢に引っ張られて、何か早とちりをして、間違った選択をしたのか?
……いや、そんなはずがない。
このままいけば、確かに、絆月は今みたいな辛い思いをすることは無かったかもだけど、俺にずっと依存する、なんて未来が幸せなはずがない。
だから、これで良かったんだ。
中学に上がれば、直ぐに絆月も立ち直るはずだ。
そうして、俺たちはお互い、違う中学に入学した。
その間、何度か絆月と顔を合わせはしたけど、なるべく関わることは無かった。
そして、そんな日から3年の月日が経ち、俺は15歳になった。
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