ド・ラ 変態ロマンビルドで攻略するVR
鳥塚 勇斗
第一章 一瞳絶死
第1話 無理ゲー
息を切らして、逃げる。
現実世界とは違う
圧倒的リアリティー、圧倒的非現実感。
さすがは『ファンタジーをリアルに』を謳い文句にしているVRMMOといったところか。
ガチャン、という鉄がぶつかった音が響く。
未来都市ザルンと呼ばれるフィールドがある。
遥か昔に栄えたSFチックなビル群が立ち並ぶ廃墟の街。
閑散とした廃墟であるはずなのにこの街には苔や瓦礫どころかホコリの一つすら落ちていない。試しに地面に人差し指を当てて擦ってみても指先には何もつかない。
たかがゲームでそこまで再現されるわけがないだろ、というツッコミはこのゲームには御法度だ。そこらへんもどういうわけかちゃんと再現してくれるのがこのドラファンである。
このゲームはこの街にあるビル一つ一つにちゃんと入ることができて、その上細部まできっちりと作り込まれている。非常にキミが悪い。
机の下に隠れて様子を伺う。
俺は背中に装備した自前の武器を手に取る。
視界の端に映り込むアシストウィンドウを端に追いやって、足音を立てないようにひっそりとビルの窓から顔を出す。
人っ子ひとりいない閑散としたビル群の中で一つ、高速移動している物体が映った。
奴だ。
俺の相棒いや愛銃をそっと構えるとその物体は途端に姿を消した。
その直後隣の部屋から轟音が鳴り響く。
割れたガラスの破片が今自分がいる部屋の窓からも見えた。おそらく攻撃を喰らったのだろう。
使っていた腕輪の効果も切れてしまっている。
特殊アイテム『偽装の腕輪』。MPを消費することで自分とそっくりのデコイを出すことができるこのアイテムを使って、俺は隣の部屋にダミーを仕掛けていた。
腕輪の効果が完全に消えていることを見るに、おそらくデコイを直接攻撃されたとみて間違いはないだろう。
敵のいた場所からおおよそ500メートルは離れていたというのに奴の銃口はダミーをしっかりと捉えていやがる。
ただ、これまではいつも通りだ。
今自分がやることはただ落ち着いて奴の頭に攻撃をすることだけだ。
攻撃後の硬直をつく、ゲーマーの基本操作だ。
引き金を引く。
右上のアシストウィンドウに奴の体力インジケータが表示された。緑色のゲージが一部黒くなっている。
命中したのだ。
「よし……」
三日ぶり、十回目の成功。
あとは射線を変えてもう一度狙撃を成功させれば、いける。
そう思って立ち上がったのも束の間、右上のインジケータが一瞬点滅した。
これは、モンスターの固有スキル使用演出だ。
「やべ」
視界にはGAMEOVERの一列が広がっていた。
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