ある少女の追憶


雨が降っているのに傘を忘れてくるような子どもでした


   ◆


朝日の素晴らしさは知らない

でもこの夜の越え難さなら痛いほど感じている

欲しい、欲しい、火が欲しい

雨に濡れたこの夜を、温めるための火が欲しい


   ◆


今日も生きろと朝が急かす

望みどおりに生きられなかった昨日を返せ


   ◆


人生のあとがきが失われた午後の肌寒さよ


   ◆


星空は見たいやつだけ見ればいい


   ◆


満員のバス

雨の向こうに専門学校の広告

何者にもなれぬ少女は

怪物になる夢を見た


   ◆


モンスター傘もささずにどこへゆく

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断章ノート 屑木 夢平 @m_quzuki

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