第7話 選ばれし者 7
僕は父親と言うものが分からない
僕の父親が生きていた当時、父親は殆ど家に居なかった
冒険者だった父親は普段からいろいろな町を渡り、海を越え、国を越えの人だった。
だけど、僕は辛く無かった。「父親が居ない」のが当たり前というのもあったが、僕には自分を大切にしてくれる母親、妹、そしてハヤテやカナデがいる。
それに毎年2度、決まった日に大量の土産を持ってきて、帰って来る。帰ってくる日は、母親の誕生日、そして僕と妹の誕生日である。
ーアルトの家ー
アルト「ただいま」
アルトの帰りの知らせを聞くと「ダダダ」と階段を駆け下りる音。
うつむいた顔を上げると、そこに居たのは妹である
妹「大丈夫だった?」
アルト「あぁ、ハヤテは無事だったよ」
アルト (ハヤテの父親については黙っておこう)
妹を安心させるためにアルトはハヤテが無事に見つかった事だけを言った
もちろん、ハヤテの家庭を過剰に心配させたくないと言う思いもあるが、一番は父親の事を少しでも思い出させないためである
その様な話をしていると静かに階段を下りる音。目線をそちらに向けるとカナデの姿がある。実はハヤテが森から戻らないとハヤテの父親に知らされた時、アルトはカナデを家に呼んだ。妹を、夜一人にさせない為である。
カナデ「ちょっと来て」
アルトはカナデに引っ張られる様に連れていかれた
階段を駆け上がり、アルトの部屋の前に着く。
カナデ「で、何があったの?」
アルト「...」
少しの間、アルトは沈黙する。だが、カナデの圧に負けてか、アルトは自分の部屋に入り、カナデに手招きをした
カナデ「え、え?ちょ、ちょっと何やってるのよ///」
なぜだか顔を赤面し、慌てるカナデ。対極にアルトは何を「言ってるんだ」と言う顔。
アルト「妹に聞かれるとまずいからな。早く入ってくれ」
カナデ「あ、あぁそう言うことね。分かったわ」
カナデは納得と落胆の気持ちを抑えながら、アルトの部屋に入った
妹 (.....)
半分程まで階段を上り、立ち止まる妹
ーアルトの部屋ー
カナデ「意外と綺麗なんだね」
カナデは自分の父親の部屋の具合と比較しながらアルトの部屋の中を見る
アルト「妹が掃除してくれるからね」
カナデ「へぇ~。って、妹ちゃん部屋に入れてるの!」
アルトの唐突な言葉にカナデは慌てふためく
アルト「うん。あ、そう言えば妹は自分の部屋に入るなって」
カナデ「そりゃそうよ。兄弟とはいえ異性を部屋には...。まぁ、今はそんなことは置いといて、結局ハヤテはどうなったの」
お互い立ち止まったまま、視線だけを動かす。アルトは逃げる様に、カナデはそれを捕らえる様に
ついに、アルトはカナデの質問に答えた。ハヤテを見つけたこと、そしてハヤテの父親のこと
カナデ「なるほど、ハヤテの父さんがね~。」
アルト「父親のことは妹には内緒にな」
カナデ「わかってるよ」
静寂。ハヤテを心配するアルトとカナデそして妹
妹 (なるほど、なるほど。お兄ちゃんが部屋に入った理由はこれか。別に言ってもよかったのに)
カナデ「聞けたいことも聞けたことだし、そろそろ帰る」
妹 (まずい!早く部屋に戻らないと。)
妹の部屋は閉まってる
妹 (ヤバい、ヤバい。お兄ちゃんがドアを開けるまで残り2秒。ここから私が静かにドアを開閉出来る確率は0%。かくなる上は)
考えを終えると、妹はすぐさまドアの裏に隠れた
キィーと擦れる音を鳴らし、開かれるドア。妹とドアの距離はどんどん縮まる。怯み、目を瞑る。
痛みは無い。目を開けると眼前まで迫ったドアと話し声
アルト「妹と一緒に留守番してくれてありがとう」
カナデ「どういたしまして」
二人は階段を下りる
妹 (ちゃんとドアを閉めなさい。全くお兄ちゃんは。まぁ、そのおかげで助かったんだけど)
一抹の不安を終え、階段を下る音を聴きながら、自室へと足を進める。 乗り越えた達成感と疲れからベッドにダイブする。 天井を見ると、いつもあったものがそこにはない
妹 (そうだ。カナデさんが来たから)
妹は 部屋の奥の押し入れを開けた。 そこから選別し、複数枚選ぶとそれを天井に張り付ける
妹は再びベッドに横たわる
天井を見上げた先に映るは
妹 (あははは。お兄ちゃん///、そんなに見つめちゃ///)
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