第1話 ひたすらナニコレ…。
ど、どうしろと………!
俺は『天国』と書かれた看板の下で唖然としていた。
そう、俺は死んだのだ。
何か特別な事があった訳では無い、不注意でトラックに轢かれ、そのまま…。
………、まぁ良い。
そこまでは良い。
寧ろそこからが問題だ。
何があったのかと言うと……………、
――――――――――
「ウェルカムトゥ〜ヘヴン!…………ゴメンねぃ俺日本人担当だからホントは英語そんなに分かんないや。」
やけにメカメカしいメカに乗った憎たらしい顔付きの猿が目の前に現れ、おもむろにそう言った。
何故話せるのかは全く持って不明だが、猿はそれがあたかも当然であるかのように続ける。
「俺はあの世の門番イェックノン!結論から言うと君は死んだ………。でも安心して、天国行きだから。」
天国?どゆこと?
てか俺死んだって?
「うん、死んだの。でもねぃ良かったね、昨日丁度天国行きの基準が大幅に下がったのよ。元の基準なら殆どの人間は皆余裕で地獄行きだったんだけど、君は特別に何も苦労せず極楽浄土を満喫出来るよ。」
なんだコイツ、勝手に心を読んだ挙げ句やけに説明的な口調で返しやがって………。
――――――――――
と、いうわけだ。
そしてその後色々と正式な手続きを取った上でここに来たのだが………。
閻魔とかいうヤツに聞いた所、今の地球に人間は誰一人としていないらしい。
一体どういう事なのかと言うと、俺が死んだ翌日の昼頃、宇宙規模で見ると割と近場にあるのに重力の歪みの関係上地球から見えなくなっていた赤色巨星が寿命を迎え、超新星大爆発を起こしたそうだ。
その結果大量のガンマ線バーストが地球に降り注ぎ、ありとあらゆる生物を皆死滅させたのだという。
…………、しかし、その生物達は今、誰も天国には来ていない。
それは何故か?
これも、閻魔とか言うヤツに聞いた。
というか、実の所これはその閻魔とか言うヤツが事の発端だった。
地球の生命を哀れだと思った閻魔は、他の位の高い神々と共に全く新しい別の世界『
そして、死に絶えた生命の全てのその世界の生物として生まれ変わらせたのだ。
まあ要するに、人類が地球ごと異世界転生したという事だ。
俺はギリギリ範囲内の時間に届かず、天国行きとなったらしい。
……………くっ、くそ!
なんで俺だけ………!
一緒に入れてくれても良いじゃん………!
………、と、思った。
別にそういうのに憧れてたとかでは断じてない。
シンプルに俺もまだ生きていたかったというだけだ。
……………。
まあ、過ぎてしまった事には仕方が無いか………。
俺はこれから天国で生きて(?)いくしかないんだからな。
じゃあまず……………。
ふと上を見上げると『天国』の文字。
ど、どうしろと………!
そうだ、今こんな状況だった、呑気に回想なんてしてるべきじゃ無かった………。
俺はバカだ。
現世の事ばかり気にかけて、肝心の天国に関する事については殆ど聞いて来なかったのだ。
俺がこれから天国でどうやっていけば良いのか、真剣に考えなければ………。
「グロロロロロロロォ……………。」
え?
背後から何かイヤな予感のする声がした。
恐らく人間の物では無い、動物の物だ。
俺は生命体としての生存本能による圧倒的な危機感を、生前では感じた事が無いくらい強烈に感じ取った。
………だが、怖気づいていては何も始まらない。
俺がもう何も考えずに現実逃避したいという気持ちをぐっと押し殺し、恐る恐る後ろを振り返ると……………。
「あ、あ、あ…………………。」
「グォォォォァァァァアアアアア!!!!!」
俺はすぐさま前を向き直し、本能の赴くままに全速力で走り出した。
何を隠そう、俺の後ろには巨大な恐竜がいたのだ。
天国だから善行を積んだ恐竜だっているって事か………?
何にせよ、二足歩行だったし、吠えてたし、多分肉食だ。
このままじゃ食われて死ぬ。
もう死んでるけど多分もう一回死ぬ………。
ドシンッ!ドシンッ!
足音がどんどん近づいて来る。
俺は更に足を早めたが全く意味が無かった。
もう真後ろまで来ている、もう少しで追いつかれてしまう、と諦めかけたその時………、
「
………サクッ。
力の籠もった静かな声と、軽い風のような音が鳴り響いた。
「ㇹァ…、………、ァァァ…、ァァぁ゙………。」
声にならない様な掠れた断末魔が聞こえ、再び後ろを振り返ると…………。
…………そこには、首の無い恐竜がいた。
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