第4話

香織と涼介は、ピエールのレシピが安全に保管されていることを確認した後、地下室を後にした。彼らは次に何をすべきかを考えながら、図書館の静けさの中で再び計画を練った。


「香織、このレシピが見つかったことで、ピエールがどのようにしてそれを守ろうとしたかが少しわかったわね。しかし、彼の行方についてはまだ手がかりがない。」涼介は心配そうに言った。


「そうね。ピエールがどこにいるのか、そして彼が危険に晒されている理由を明らかにしなければならないわ。」香織は目を細めて考え込んだ。


その時、再び香織の携帯電話が鳴った。画面には見慣れない番号が表示されていた。香織は一瞬躊躇したが、すぐに電話を取った。「もしもし、三田村香織です。」


「三田村さん、私はピエールの友人であるクロード・ベルトランです。彼のことでお話ししたいことがあります。今すぐお会いできませんか?」電話の向こうから緊張した声が聞こえた。


「クロードさん、あなたがピエールの友人なのですね。どこでお会いできますか?」香織は真剣な声で尋ねた。


「オペラ座の近くにあるカフェ・ドゥ・ラペでお待ちしています。」クロードは急いで答えた。


「わかりました。すぐに向かいます。」香織は電話を切り、涼介に状況を説明した。「ピエールの友人のクロードさんが情報を持っているようです。オペラ座の近くのカフェで会いましょう。」


二人は急いでカフェ・ドゥ・ラペへと向かった。パリの街並みは依然として賑わっており、人々の笑顔と歓声が響いていた。しかし、香織と涼介の心には一刻も早くピエールを見つけ出さなければならないという緊張感があった。


カフェに到着すると、クロード・ベルトランが落ち着かない様子でテーブルに座っていた。彼は中年の男性で、短く整えられた髪と鋭い目つきをしていた。香織と涼介が近づくと、彼は立ち上がって二人を迎えた。


「三田村さん、藤田さん、来てくださってありがとうございます。」クロードは握手を交わしながら感謝の意を示した。


「こちらこそ、クロードさん。ピエールのことについて教えてください。」香織はクロードを見つめて言った。


「実は、ピエールが何かに巻き込まれているのはわかっていました。彼は最近、何度も私に助けを求めてきましたが、具体的なことは言わず、ただレシピを守るようにと言っていました。」クロードは焦りと不安を滲ませた声で話した。


「レシピが狙われている理由について、何か心当たりはありますか?」涼介が尋ねた。


「はい。ピエールが持っているビーフ・ブルギニョンのレシピは、単なる料理のレシピではありません。それには古代の秘伝が含まれており、非常に貴重なものです。そのため、国際的な犯罪組織BMCがそのレシピを狙っているのです。」クロードは説明した。


「BMC…やはり彼らが背後にいるのですね。」香織は深く考え込んだ。


「ピエールは、BMCに捕らえられる前に私にこの場所を教えてくれました。」クロードは紙片を取り出し、香織に手渡した。


「これは…地下倉庫の住所ですね。」香織は紙片をじっくりと見つめた。「そこにピエールがいるかもしれない。」


「その通りです。しかし、その場所は非常に危険です。BMCのアジトが近くにあると言われています。」クロードは心配そうに言った。


「それでも行かなければならない。」涼介は決意に満ちた表情で言った。「香織、行こう。ピエールを救い出し、真実を暴きましょう。」


「はい、涼介。私たちの任務はまだ終わっていない。」香織は力強く頷いた。


二人はクロードに感謝の言葉を述べ、再び行動を開始した。彼らの次なる目的地は、ピエールが囚われている可能性のある地下倉庫だった。


パリの街を駆け抜け、二人は指定された住所に到着した。そこは古い建物が立ち並ぶ静かな地区だった。倉庫の前で立ち止まり、香織は深呼吸をして覚悟を決めた。


「行こう、涼介。ここにピエールがいるはず。」香織は静かに扉を押し開けた。


薄暗い倉庫の中、彼らは慎重に進んだ。そこには古い木箱や金属製の棚が無造作に置かれていた。足音を立てないように注意しながら、二人は奥へと進んだ。


突然、何かが動く音が聞こえた。涼介が身構え、香織は冷静に周囲を見渡した。


「誰かいる…」香織が囁いた瞬間、暗闇の中から影が現れた。


「三田村香織と藤田涼介…お前たちが来るのを待っていた。」冷たい声が響いた。


「BMCの刺客か…」涼介が銃を構えた。


「その通りだ。だが、ここでお前たちの旅は終わりだ。」刺客は微笑みながら近づいてきた。


「涼介、気をつけて!」香織が警告したその瞬間、刺客は素早く動き、涼介に襲いかかった。銃を持つ涼介と刺客の激しい格闘が始まった。


「香織、ピエールを探せ!俺がこいつを抑える!」涼介が叫んだ。


「わかった!」香織は即座に動き、倉庫の奥へと走った。


倉庫の奥にたどり着くと、香織は鎖で閉ざされた扉を見つけた。彼女は急いで鍵を探し、扉を開けた。そこには、無事なピエールが鎖に繋がれて座っていた。


「ピエールさん、大丈夫ですか?」香織は急いで彼の鎖を外した。


「香織さん…ありがとう…」ピエールは疲れ果てた声で答えた。


「急いでここを離れましょう。涼介が刺客を抑えてくれています。」香織はピエールを支えながら、倉庫の出口へと向かった。


外に出ると、涼介が刺客を倒して立っていた。彼は軽く息を切らしながらも、笑顔で香織とピエールを迎えた。


「無事でよかった。」涼介が言った。


「ありがとう、涼介。あなたのおかげでピエールさんを救い出せたわ。」香織は感謝の意を込めて言った。


「これで事件は解決に近づいたけれど、まだ終わりではないわ。」香織は決意を新たにした。「私たちはBMCの陰謀を完全に暴き、フランス料理の誇りを守らなければならない。」


三人はパリの朝陽を背に、新たな決意と共に歩き出した。彼らの冒険はまだ続く。

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