【完結】パリオリンピック グルメミステリー: 失われたレシピ

湊 マチ

第1話

パリの夜、エッフェル塔が煌々と輝き、セーヌ川の水面にその光が反射していた。街全体がオリンピックの熱気に包まれ、各国から訪れた観光客と選手たちで賑わっていた。フランスの首都は、まるで祝祭の中心となり、喜びと興奮が交差していた。


その中でも特に注目を集めていたのは、「オリンピック・キッチン」と呼ばれる施設だった。ここでは、世界中のシェフたちが腕を競い合い、各国の代表的な料理が提供されていた。選手たちの栄養と健康を支えるために、最高の食材と技術が集結していた。


しかし、その華やかな表舞台の裏で、静かに動き始めた陰謀があった。


パリの中心部に位置する高級レストラン「ル・クラシック」。その厨房では、フランス料理界の巨匠、ピエール・デュボワが忙しく立ち働いていた。彼は「ビーフ・ブルギニョン」の達人として知られ、そのレシピはフランス料理の象徴とされていた。


その夜、ピエールはレシピを一冊の革表紙のノートに書き留めていた。彼は、そのレシピがオリンピック・キッチンで披露されることを楽しみにしていた。しかし、厨房の扉が開き、冷たい風が吹き込んだとき、彼は何者かの存在を感じ取った。


「誰だ?」ピエールは警戒しながら声を上げた。


しかし、返事はなかった。代わりに、黒い影が彼に向かってゆっくりと近づいてきた。影は素早く動き、ピエールに襲いかかった。彼は抵抗しようとしたが、強力な腕に押さえつけられ、力を奪われた。


「あなたがレシピを持っていることは知っている。」低く冷たい声が響いた。「それを渡せ。」


ピエールは必死に抵抗したが、無駄だった。影は彼からノートを奪い取り、消えるように去っていった。


翌朝、ピエールは行方不明となり、レシピのノートも跡形もなく消えていた。レストランのスタッフは警察に通報し、捜査が始まったが、手がかりはほとんどなかった。


一方、パリの別の場所では、世界的に有名な探偵、三田村香織とそのパートナー、藤田涼介がパリオリンピックを観戦していた。彼らは美しい街並みとイベントを楽しんでいたが、突然の電話が彼らの休暇を中断させた。


「三田村さん、助けてください。」電話の向こうから聞こえた声は、ピエールの友人であり、オリンピック・キッチンの責任者、マルセル・ラヴォワだった。「ピエールが行方不明になり、レシピが消えました。」


香織は一瞬のうちに事態の深刻さを理解した。彼女は涼介に目配せし、すぐに動き出すことを決意した。


「わかりました、マルセルさん。すぐにそちらに向かいます。」香織は電話を切り、涼介に言った。「パリのオリンピック・キッチンに何か大きな問題が起きているわ。」


こうして、香織と涼介の新たな冒険が始まった。パリの華やかな舞台の裏で暗躍する陰謀を暴くため、二人は調査を開始する。そして、フランス料理の誇りを守るため、彼らは再び立ち上がった。


夜のパリは、まだ静かに眠っている。しかし、その静寂の中で、激しい戦いが幕を開けようとしていた。

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