訓練終了
ワインの店を出た後、チーズを買い漁りに。カザフ達には自分で選ばせたチーズをホールで1つずつ買ってやる。思う存分食べたまへ。マーギンは定番の物を購入しようとしていると、
「なぁ、うちにも買うてぇなぁ」
おねだりハンナリー。
「お前、金持ってるだろうが」
「そやねんけどな…」
と、寂しそうな顔をする。あー、こいつもバネッサと同じか。親になんか買ってもらったことないんだろうな。
「一つだけだぞ」
「ええのっ?」
「好きなの選んでこい」
そう言うとスキップしてお目当てのチーズを持って来た。一番高いやつじゃねーか。
と言っても、マッコイが連れて来てくれたこのチーズの店も安い。棚にズラッとホールのチーズが並んでいて種類も豊富だ。
「お前、値段で選んだだろ?」
「それもあんねんけどな、これええ匂いしてんねん」
「本当だな。他のチーズとちょっと匂いが違うな。というか俺は苦手な臭いだ」
店の人が近くにいるので、臭いとは言えない。
「それは山羊のミルクから作ったチーズですよ。作られている数が少ないので少々お高めですね。好き嫌いは分かれますが、お好きな方はそれしか食べないという方もおられます」
「へぇ、そうなんだね」
「春から夏前までに来て頂いたら、フレッシュなやつもあります。それは食べやすいですよ」
「チーズにも季節があるんだね」
「はい。熟成が必要なものもどれだけ熟成させるかで味も変わります。少しずつ食べてみて味の変化を楽しむのも良いですよ」
と、今までそんなの考えた事がなかったマーギン。アイテムボックスに入れておくと熟成もへったくれもないからな。
マーギンはよく知ってるチーズを買っておいた。これはフライにして食べよう。
「マッコイ、いい店を教えてくれてありがとうね」
「もう帰るのか?」
「なんなら晩飯一緒に食う?もう一泊して帰るから」
「おー、そうしよう」
(戻らなくて大丈夫なのか?)
(だ、だ、大丈夫だ)
本当か?
マッコイのオススメの店に行くと、洋風居酒屋みたいな店だった。いいね、こういうの。どれも旨いわ。
タジキはこれはなんだ?とか色々とマッコイに聞きながら必死に覚えようしていた。ぜひ再現してみてくれ。
そしていつまでも帰りたがらないマッコイに付き合ったマーギンは皆を宿に帰らせ、朝まであちこちハシゴ酒をしたのであった。
ガコガコガコ
マーギン達は王都に向かう馬車に乗っている。
「マーギン、酒臭ぇ」
「悪いな、さっきまで飲んでたからな」
カザフ達に酒臭いと言われるマーギン。飲み過ぎと馬車の揺れで気持ちが悪い。これ、夜まで揺られるのか…
どうせ気持ち悪いのならいっその事転移魔法で…
いや、やめておこう。
マーギンはずっとうっぷうっぷとダムの崩壊寸前になっていたので、皆から嫌な目で見られていたのであった。
「やっと着いたぜ」
今日で騎士宿舎に泊まるのも最後だ。飯は?と聞かれたけどパスして、先に寝ることにしたのであった。
翌朝復活したマーギンは朝飯を食堂で食べて、食堂のおばちゃん達にカザフ達と共にお世話になりましたと挨拶をする。
「あら、いなくなっちゃうのかい?」
「おばちゃん、また来るぜとは言えないけど、俺達は東門の近くに住んでるからよ。近くまで来たらまた会えるかもな」
「そうかい、寂しくなるね」
食堂のおばちゃんたちに可愛がられていたカザフ達はお別れのハグをしてサヨナラをしたのであった。
「マーギン、これからの予定はどうなっているのだ?」
「タイベに行く前に狩りたい魔物がいるんだよね。それを狩って来るから3日後に出発しようか」
オルターネンと出発日を3日後にと決めようとすると、
「一人で狩りに行くのか?」
「そのつもりだけど?狩りたい魔物がいる場所は行くのが困難みたいなんだよ」
ロドリゲスに聞いた話をする。
「俺達も行こう」
「かなり大変みたいだよ?」
「それも訓練だ」
ということで特務隊を連れて行くことに。
「マーギン、何を狩りに行くのだ?」
と、ロッカが聞いてくる。
「赤毛マギュウ」
「赤毛マギュウ?」
「牛系の魔物だね。そこそこ強いけど、肉が旨いんだよ」
「なら私達も狩りに行こう」
「狩って来たやつは分けてやるけど?」
「いや、獲物は自分で狩りたいからな。旨いなら尚更だ」
ということで星の導きも参加。そうなると当然カザフ達とハンナリーも来る。
「カタリーナ、お前も行きたいか?」
「うん♪」
「かなり険しい場所だから、岩登りがずっと続くぞ」
「木登りの特訓したから平気よ!」
結局全員参加になった。
出発は明日にする。
「マーギン、今から大隊長に報告に行くぞ」
ちい兄様だけ行けばいいじゃんと言いかけてやめる。特訓が終わった事と、北の街の報告をしておいた方がいいな。
カザフ達をロッカに預けて庶民街に先に帰ってもらい、大隊長の所へ。
ー大隊長室ー
「そうか、特訓も終わりか。オルターネン、実地訓練はどうだった?」
「貴重な体験をして来ました。マーギンから事前に言われていた事が正しく理解出来たと思います」
オルターネンは何があったかを報告し、次はマーギンが橋の話をした。
「そうか、魔物が橋を渡って来るのか」
「北の街のハンター組合長には報告済。領主に川沿いに柵を作るように進言してと言っておいたけど、やらないかもね。どっちにしろこの冬は間に合わないから、今年も魔狼がたくさん来ると思うよ」
「雪熊は出るか?」
「どうだろ?そんなに数がいる魔物じゃないから、この冬に出る可能性は低いかな。魔物同士の争いで1匹死んだし」
「そうか。それならあいつらでなんとかなるか」
「あいつらって?」
「王都軍だ。魔物討伐隊を軍でも持つ事になった。北の街の領主から応援要請が入れば次は軍が動くだろう」
「他国を刺激するんじゃないの?」
「ハンター風の防具類にするらしいぞ」
なるほどね。見た目は軍には見えないわけか。
「雪に強い人はいるかな?」
「それは大丈夫だろう。雪の積もる時に敵が攻めて来ました。お手上げですというわけにはいかんからな」
それもそうだな。
大隊長の話によると、魔物の数に対応するのが軍、強い魔物に対応するのが特務隊みたいな感じになるようだ。特務隊が勇者パーティーって感じか。
「北の領地の事は陛下にも報告を上げておく。タイベにはいつ出発だ?」
「1週間後ぐらいかな」
「なら、出発前に陛下に謁見する時間を取れ」
「え?」
「陛下と王妃がマーギンに話があるそうだ」
「なんの?」
「詳しくはわからんが、報奨とかだろう」
「なんの報奨?」
「貴族の不正摘発や軍、騎士隊の特訓等色々含めてだろうな」
「もういいよそんなの。不正の件はこっちも助かったし」
「そういう訳にはいかん。陛下もこの訓練が終わるのを待っておられたのだ。このままマーギンに何もしないというわけには王家としても出来ぬだろう」
大隊長によると断れないらしい。王家の顔を立ててくれと言われて、わかりましたとしか返事が出来なかったのであった。
報奨って、カタリーナじゃないよね?
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