大魔術師とその秘書官―黄金の不死鳥―

北原小五

プロローグ 絶死の戦場


【プロローグ 絶死の戦場】


 そこには広大な死が横たわっていた。


 家屋は燃え尽き、街のシンボルである時計塔は脆く崩れ去っている。人が焼ける臭いが鼻をつき、目からは感情によるものなのか、煙のせいなのか、絶え間なく涙が零れてくる。


 みんな死んでいた。家族も、友人も、みんな、敵国であるオーリバイン王国の騎士たちに殺された。


 まだ幼い少年、ヴィンセント・スティーリアは弱い自分を許せなかった。身の内に宿るのは身を焦がすような悔しさと、燃えるような復讐心だ。


 必ず敵を討つ。


 ただそれだけのために生きてきた。ただそれだけのために死なないでいた。

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