リアライズ origin【第1部】
潮陽一郎
現実 → 虚構
戦争は始まった。突然始まったわけではない。ある程度の予言と予兆を秘め、始まるべくして始まったのは誰の目から見ても明かだった。かつてない世界的規模の殺戮と破壊が嵐のように各都市に吹き荒れた。暴風雨さながらの威力で多くの巨大な高層ビルを次々と薙倒し人々をその下敷にした。悲鳴を礎石とした廃虚の街の上空には巨大な爆撃機が鉄の雨を油と共に撒散らした。わずかに生き延びた者たちの声は押しつぶされ廃虚の街はさらに砂塵の土地と成り果てた。鉄とコンクリートとガラスとプラスチックの砂漠。
世界一高いと言われたこの国の超高層ビルは音もなく虹のような孤を描いて飛んできたミサイルを十数発も同時に食らって地上から完全に消滅した。元々ミサイル一つでビル一つ完全に破壊できるにも関わらず、まるで子供の悪ふざけのようにミサイルが十数発以上も飛来してきた。そのため命中と同時にビルの中に収容した人間及び付近にいた半径二キロの人間があわせて数百万人はドス黒い血を流して死んだ。都市を走る道路には何台もの戦車が我がもの顔で疾駆していた。砲塔をぐるぐる廻しては無邪気にそして狂ったように巨大な弾丸を発射していた。海からは兵隊たちがやって来た。彼らは氷のような冷静な瞳のまま任務を着実にこなしていった。そう、人々を大量に殺して行った。それが誰であれ平等に。
しかし、それがただの流れては消える風景の一部でしかなかったことに気づいたのはもっとずっと先の遠い未来の子供たちだった。
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