限りなくノンフィクションに近いフィクション!

崔 梨遙(再)

1話完結:1100字

 何度も書いているが、僕の中学時代と高校時代は暗黒時代だった。勿論、早く素敵な彼女がほしい!  だが、それよりも何よりも“童貞”を卒業したかった。当時、僕は17歳。“初体験は17歳です!”と言えたらなんと素晴らしいことだろう! だが、僕には相手がいない。


 友人の柏原と合流して夜の街へと繰り出す。柏原は何故か上機嫌だった。


「どないしたんや? 柏原。今日は上機嫌やんけ」

「おお、昨日、童貞を捨てたんや。俺はもう1人前の大人の男やで!」

「マジか! 相手は誰やねん?」

「中学の時の同級生や!」

「だから、誰やねん?」

「新垣や!」

「新垣ー?」


 新垣素子は同じ中学出身で、異性関係に奔放でサ〇子と呼ばれていた。素子のおかげで童貞を捨てることが出来た同級生が他にも何人かいた。


「崔君も、新垣に頼んだらええやんけ」

「新垣の家を知らん」

「こっちや、ついて来いや」


「このマンションや」

「ここか-!」

「402号室やから。ほな、俺は今日は帰るわ」

「ちょっと待てや、なんて言えばいいねん?」

「やらせてくれって言うたらええねん」

「そのままやないかーい!」

「あ、今日は祭りやな。俺は誰か呼んで祭り行くけど、崔君は童貞捨てろや、ほな、また」


 とりあえず、402号室前。僕は何回も深呼吸してからピンポンを押した。


「はーい!」


 新垣と会うのは卒業以来だ。変わっていない。いや、少しだけ女っぽくなったのかな? 胸が少し大きくなったかな? 身長155センチくらい。顔は微妙。美人でもないしかわいくもない。だが、決してブサイクではない。要するに、何もかも普通なのだ。


「崔君やん、久しぶりやね」

「ああ、久しぶりやなぁ」

「崔君も、童貞捨てに来たん?」

「え! ああ、うん、実はそうやねん」

「中に入ってええで、私、シャワー浴びてくるわ」

「うん」


 素子がシャワーを浴びる音が聞こえる。目の前には素子のベッド。僕は、今、ここで、童貞から卒業するのか? するのか?


 だが、僕は“18歳までに童貞を捨てたい”と思っている。出来れば惚れた女性を相手に童貞を捨てたい。まだ1年もある。そうだ、まだ1年もあるじゃないか!


「お待たせ、ほな、ベッドに入ろか?」

「いや、今日はお祭りやったな」

「あ、ほんまや。露店が沢山出てるやろうね」

「Hはやめて、今日は祭りに行こうか?」

「しなくてええの? ええよ、崔君やったらHしても」

「なんか、今日は新垣と一緒に祭りに行きたくなった」

「ほな、行こか!」



 僕達は、夜祭りを楽しんでから帰った。素子は僕が取ってあげた金魚を嬉しそうに持っていた。


「ほな、またね」

「うん、またな」



 それから、素子とは会ったことが無い。







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