第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト【短歌/二十首連作部門】『禍根』

うみとまお

短歌二十首『禍根』


2歳には分からなかった 最愛の母が悪魔に魅入られたこと


助けてよ 小さな指が千切れそう ミミズ腫れの皮膚 泣き叫ぶ声


手痛いと 百叩きは十回に 平手をやめて布団叩きに



教室の独裁者は 拳骨でモグラたたきを児童の頭に


校庭でしゃがむ児童に 影落ちて 女の手から食わされる砂利


サーファーの体育教師ブチギレて 往復ビンタ 吹き飛ぶ頭



目が据わり 顔は紅潮 引きつって 生徒は恰好のサンドバッグ


踊り場で 暴力という快楽に溺れた男は 学年主任


バカと言うお前がバカだ 分かるまで教えることがテメーの仕事



≪体罰≫という言葉ほど 都合よく大人が使う呪文はない


集団になると急にでかいツラ 一人で来いや ウスバカゲロウ


あからさま人を見た目でナメる奴 進化してないサル目ヒト科



テスト中「答え見せろ」と言ったカス 断るオレの背中を殴る


卑怯な奴らはいつも 後ろからこっそり近づき 蹴り入れてくる


現実のジャイアンは口下手で 鼻息荒く 顔面殴る



組み敷かれ 鼻は折られて 校舎裏 尖った石が頭に刺さる


皮膚の下 骨で感じる鈍痛と同時に襲う 次への恐怖


盗まれた自転車の数3台 車に轢かれたのも3回



ブチギレて前歯折るほど このオレに負かされるのがそんなに嫌か?


ありえねぇ すれ違いざま「殴らせろ」と言う詰襟 これが人です


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