第12話 現場
「ここがAV制作の現場ねw」
「……はえ~」
道乃丈はこの日、紗綾の仕事に同伴していた。
誘われたので応じた感じである。
この世界のAV制作現場がどういうモノなのか気になっていたのだ。
現場は撮影前の状態だった。
そんな中、綺麗なバスローブ姿の女性が紗綾に近付いてきて、
「監督、おはようございます。演出について確認したいことがあるんですけど」
「あぁうん、どこどこ?」
そう言って一緒に台本を覗き始める。
(……女優さんかな)
この世界における女優=元の世界の男優扱い、と考えた場合、主役ではないのだろう。だから先入りしているのだと思われる。
そう考えていると、やや遅れてバスローブ姿のアイドル気風な青年がやってきた。
ハッとする。
間違いなく主役だと分かるオーラだった。
「なんや監督、その少年はどうしはったんですか?」
「あ、タカヤくんおはよう。この子はミチオって言って、社会科見学中」
「へえ、社会科見学」
タカヤと呼ばれた青年が、サラサラの黒いマッシュルームカットを揺らしながら道乃丈の前に歩み寄ってきた。
「なんや君、男優志望なん?」
「あ、えっと……興味はあるかなぁ、って感じですかね」
「そうなんか。まぁでも、簡単な仕事やないで? これくらいのボディは持ってな話にならんわ。ボクら男優は見世物やからね」
そう言ってタカヤがバスローブを脱いでみせた。
あらわになったのは均整の取れた身体。
ムキムキ過ぎず、ひょろひょろ過ぎず。
一応まだブーメランパンツのような下着を穿いており、完全なキャストオフ状態ではない。
タカヤはボディビルダーのようなポージングを決めつつ、
「――13センチや」
「え?」
「ボクのサイズ。もちろん股間の、な」
タカヤはどこか誇らしげである。
「男優たるモノ、サイズも重要なんやわ。君は見た目的に8センチくらいやろ?」
13センチで誇るのも不思議だし、8センチに見積もられるのもよく分からないな、と道乃丈は思う。
(……男性の性欲が弱い世界だから、全体的にサイズが小さめなのかも?)
それなら合点が行く振る舞いだ。
言葉ぶりからすると、元の世界よりもマイナス5センチくらいで考えるのが無難かもしれない。
「ふっふっふ、ミチオのはおっきいよ~w」
紗綾がニヤニヤと笑っている。
「正直、男優陣と比べるのが馬鹿らしくなるくらいデカいからw」
「な、なんですと……」
タカヤがムッとし始めていた。
「……僭越ながら監督、ミチオくんはひょろい。なよっとしとる。男臭さもあらへん。こんな少年が巨チンであるはずがなく、粗チンに決まっとるというのが相場というもんやないですか?」
(……何気に酷いことを言われている)
「でもさ、アタシのお腹を奥まで貫いてなお全然入りきらないサイズなんだよ?」
「!? か、監督はミチオくんとシとるんですか……?」
「うん、処女あげちゃった」
「――ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああボクが先に好きやったんやぞ!!!」
「…………」
「ゆ、許さん……許さんからなミチオくん……!!」
なんだか知らないが勝手に許されないことになった道乃丈に対して、鬼気迫る表情となったタカヤが肉薄し、
「――見せてみぃ!」
そう言って道乃丈のズボンに手を掛けてきた。
「え……ちょっ、なんですか!?」
「見せてみぃゆうたんや! どうせウソなんやろデカいなんて!」
「うわぁっ……!!」
ずるり、と直後に道乃丈のズボンとパンツが下ろされてしまった。
そして、
「――ぐあああああああああああああ!!」
タカヤが謎のダメージを受け始めていた。
周囲の女性ばかりのスタッフたちが「やば♡」「すご♡」と表情をきゅんきゅんさせ始めている。
そして紗綾は納得の表情で「うむうむ」と頷いていた。
「くっ、なんやねん……ありえへんやろ……」
タカヤは道乃丈のズボンとパンツを上げ直し、まるで死闘を終えたあとの戦士であるかのように息を乱していた。
「と、とんでもあらへんな、君は……」
「お、恐れ入ります……」
「悔しいが、認めるしかないわ……男優になってみぃ……ミチオくんなら天下取れるで?」
「か、考えておこうかと……」
その後、AV撮影の本番も見学させてもらえることになった。
モザイク無しの現場すげえ、と思うのと同時に、これだけたくさんの人に見られて性行為をするのは大変そうだな、とも思う道乃丈なのであった。
ちなみにこのあと、女優や女性スタッフが道乃丈とえっちしてみたいと言い出し、撮影とは無関係に紗綾も交えた大乱交状態になるのだが、それはまた別のお話……。
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