第9話
事件が解決した夜、香織と涼介は船のデッキで再び集まった。満天の星空が広がり、静寂の中で波の音だけが響いていた。彼らは静かにイザベラの計画について話し合った。
「涼介、私たちの仕事はまだ終わっていないわ。イザベラさんの真の目的を明らかにしなければならない。」香織は真剣な表情で言った。
「そうだね。彼女が巻物を盗ませた理由を突き止めなければならない。」涼介も同意し、彼らは再びイザベラのキャビンに向かった。
イザベラのキャビンに入ると、彼女は冷静な表情で二人を迎えた。「涼介さん、香織さん。巻物が無事に戻ってきて、本当に感謝しています。」
「イザベラさん、私たちはあなたの話をもっと詳しく聞きたいと思います。」香織は冷静に言った。
「もちろんです。何でもお答えします。」イザベラは微笑みながら答えた。
香織と涼介は、イザベラに対して鋭い質問を投げかけた。彼らはイザベラの行動や計画について詳しく聞き出そうとした。
「イザベラさん、あなたが巻物をわざと盗ませたのではないかと疑っています。」香織は真っ直ぐに彼女を見つめた。
「何ですって?」イザベラは一瞬動揺したが、すぐに冷静さを取り戻した。「そんなことはありません。私は巻物を大切にしていました。」
「でも、あなたの行動には一貫性がありませんでした。巻物が盗まれたとき、あなたのキャビンにいた時間が不自然に長かったのです。」涼介は鋭く指摘した。
「それは…ただの偶然です。」イザベラは苦しげに答えた。
香織はさらに追及を続けた。「そして、私たちが巻物を見つけた場所も計算されたものでした。あなたは巻物を盗ませ、その混乱の中で自分の計画を進めようとしていたのではないですか?」
イザベラはついに観念したように深く息をつき、彼女の真の意図を語り始めた。「そうです。私が巻物を盗ませたのです。注目を浴びてナイル川での発掘調査を独占し、自分の名声を高めたかったのです。」
「そのために、他人を利用して巻物を盗ませたのですね。」香織は冷静に言った。
「はい。私はエジプトの歴史に新たなページを刻むために、何としてもその情報を手に入れたかったのです。」イザベラは悔しそうに答えた。
涼介は深く息をつき、「イザベラさん、あなたの行動は許されません。私たちは真実を追求するためにここにいます。」
イザベラは静かに頷き、「わかりました。私の計画が失敗したことを認めます。あなたたちの前に隠し通すことはできませんでした。」
その後、香織と涼介は船長に事情を報告し、イザベラの不正行為を明らかにした。船長はすぐにイザベラを拘束し、適切な処置を取ることを約束した。
「涼介、大丈夫?イザベラとのことは大きな傷を残したけれど。」香織は優しく涼介に尋ねた。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう、香織。君がいてくれて本当に助かった。」涼介は微笑みながら答えた。
「これからも一緒に頑張りましょう。新しい冒険が待っているわ。」香織は決意を新たにした。
エジプトの美しい夕日がナイル川を照らし、二人は新たな冒険の始まりを感じながら、次なる謎解きに向けて歩みを進めた。
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