【完結】地中海の秘密とエジプトの謎

第3話

フィレンツェの静かな朝、香織と涼介はルイジ・ベネデッティの邸宅に向かった。美しい港町の空気が澄み渡り、石畳の道を歩くと、彼らの心には調査への決意が満ちていた。

ルイジの邸宅に到着すると、香織と涼介はまず屋敷内の詳細な調査を始めた。部屋には高価なアンティーク家具や宝石が並び、その一つ一つがルイジの富と品格を物語っていた。

「この部屋には、彼の人生が詰まっているようね。」香織は静かに呟いた。

「そうだね。何か手掛かりがあるはずだ。」涼介は周囲を見渡しながら答えた。

香織と涼介は、ルイジの書斎を調べ始めた。書斎には古い書物や書類が山積みになっており、その中に手がかりが隠されているかもしれないと考えた。

「ここに何かあるかもしれない。」香織は古い手紙の束を手に取り、その中身を確認した。

手紙の中には、ルイジが取引していた宝石商や顧客とのやり取りが書かれていたが、特に目立った異常は見つからなかった。しかし、一通の手紙が香織の目に留まった。それはダ・ヴィンチの絵画に関するものだった。

「涼介、この手紙を見て。」香織は手紙を涼介に渡した。

涼介は手紙を読み、眉をひそめた。「ダ・ヴィンチの絵画か。これが事件に関係しているのかもしれない。」

その後、二人はルイジの自宅の周囲の人々に聞き込みを行った。近隣の住人やルイジの知人に話を聞く中で、彼の秘書であるアリア・ロッシが特に重要な人物であることが浮かび上がってきた。

「ルイジさんは、アリアさんをとても信頼していたようです。」近所の住人が語った。「彼女がいないと、彼の仕事は回らなかったでしょう。」

「アリアさんは非常に優秀な方でしたね。いつも冷静で、どんな状況でも対処できる人でした。」別の住人も同意した。

香織はますますアリアに対する疑念を強めた。「涼介、アリアさんが何か隠しているかもしれないわ。」

涼介はその言葉に葛藤を抱えながらも、アリアへの感情と職業的な義務の間で揺れ動いていた。「わかってる。でも、彼女が本当に関与しているのか、もっと確かな証拠が必要だ。」

その夜、香織と涼介は再びアリアと会うことにした。アリアは自宅に二人を招き入れ、ワインを勧めた。彼女の美しい姿と優雅な振る舞いは、涼介の心をさらに揺さぶった。

「今日は何についてお話しされますか？」アリアは微笑みながら尋ねた。

「ルイジさんの死について、もう少し詳しくお話を伺いたいんです。」香織は冷静に切り出した。

「もちろんです。何でもお答えします。」アリアは落ち着いた様子で答えた。

香織はアリアに様々な質問を投げかけたが、彼女の答えは一貫して冷静であり、矛盾点は見られなかった。しかし、涼介はその間もアリアの魅力に惹かれ続けていた。

「涼介さん、あなたは素晴らしい探偵ですね。」アリアは涼介に向かって微笑んだ。「あなたと話すと、とても安心します。」

涼介は心の中で動揺しながらも、その言葉に喜びを感じた。「ありがとう、アリアさん。でも、私たちの仕事は真実を追求することです。」

アリアはその言葉を聞いて一瞬表情を曇らせたが、すぐに微笑みを取り戻した。「もちろんです。私も真実を知りたいです。」

その後、香織と涼介はアリアの自宅を後にし、街のカフェで次の手を考えた。香織は涼介に向かって言った。「涼介、あなたがアリアさんに惹かれているのはわかる。でも、彼女が本当に無実なのか、冷静に判断しなければならないわ。」

涼介は深く息をつきながら答えた。「わかってる、香織。でも、彼女が犯人だとは思えない。」

「それでも、私たちは真実を追求しなければならないのよ。」香織は強い意志を持って言った。

その晩、涼介はアリアの言葉と香織の警告の間で葛藤しながら、眠れぬ夜を過ごした。彼の心には、アリアへの愛と職業的な義務の間で揺れ動く感情が渦巻いていた。

翌日、香織と涼介は再びルイジの自宅を訪れ、さらに詳しい調査を行うことにした。書斎の隅々まで調べた結果、彼らはルイジが残した手書きのメモを発見した。そこには、ダ・ヴィンチの絵画に隠された暗号の一部が記されていた。

「これが手掛かりになるかもしれない。」香織はメモを涼介に見せた。

「確かに。これを解読すれば、事件の真相に近づけるかもしれない。」涼介はそのメモを手に取り、真剣な表情で言った。

香織と涼介は、ウフィツィ美術館の学芸員アレッサンドロに協力を求めることにした。アレッサンドロはダ・ヴィンチの絵画に詳しく、彼の協力があれば暗号を解読できるかもしれない。

こうして、香織と涼介は新たな手掛かりを元に、真実に迫るための新たな調査を開始した。フィレンツェの美しい街並みの中で、二人の探偵は複雑な感情と冷酷な真実の間で揺れ動きながら、事件の解決に向けて歩みを進めた。