六花荘の夏休み

KPenguin5 (筆吟🐧)

第1話  プロローグ

「本日未明、東京都中央区の民家で男性の遺体が発見されました。男性は30代前半、死後2.3日経過しており、身元などは不明とのことです。男性は後頭部を殴打されており、何者かに殺害された可能性があるとのことです。

この民家には80代の女性が一人で住んでおり、警察が事情を聴いています。

女性の息子が、母親の様子を伺いに訪れた際に遺体を発見したとのことです。女性はこの数日その遺体とともに生活をしていたようで、息子の話によりますと、女性はこの数か月前より認知症を患っており、亡くなった男性については、身元等わからない、見たこともないということです。

また、息子が話すには女性宅に有った金庫がなくなっており、事件との関連を警察が調べています。」


サービスエリアの駐車場で夕方のニュースが流れてくる。

見覚えのある民家の映像が流れている。

「ねぇ。あんた。あのおばあちゃんの家じゃない?本当に大丈夫なの?なんか、強盗殺人になってない?」

助手席にすわる相方が俺の腕をつかんで騒ぎだす。

「おい、危ないだろ。それにそんなキンキン声出したら起きちまうじゃないか。」

「だって、さっきのニュースってあの家の事でしょ?男の人の遺体が見つかったって。私たちが殺したみたいになっちゃってない?だから今回はあきらめようって言ったのに。しかも、こんなお荷物まで背負い込んじゃって。」

隣の相方は後ろ手ぐっすりと眠っている女の子を困った顔で見つめている。

「仕方ないじゃないか。慌てて出発してしまって、お前だって気づかなかったんだから。それに、こんな小さな子を途中で放り出すわけにもいかないだろ?俺たちだって現場に戻るには危険すぎる。」

「そうだけど…。この子。あのお婆ちゃんの家の近くに住んでる子よ。きっと。

何回か、夜とかでも一人で寂しそうに遊んでいるのを見かけたことがあるわ。何か事情があるのかもしれないわね。

でも、こんなかわいい寝顔を見ていると、もしかしたら私たちの子供もこんなかわいい子に育ったのかもなぁって思っちゃうのよ。」

「やめろよ。情をうつすと後が厄介なのはお前だってわかっているだろう。」

「・・・そうね。」



 

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