【短歌】『不脳』

うみとまお

脳内で暴れるケモノ飼いならし 普通の暮らしできたら上出来

『不脳』


脳内で 暴れるケモノ 飼いならし 普通の暮らし できたら上出来



<説明>

――抑えきれない憎悪が、オレを蝕む。――

頭の中にある過去に受けた暴力の記憶が暴発。

もう一人のオレが毎日毎日叫んでいます。

「ギィヤアァァーーーーー!!!」こんな具合に……。



<あとがき>

ついこのあいだテレビを見ていたら、ガザの女の子が取材カメラに笑顔を振りまいている場面が映った。その女の子は片足を失い6人の家族も失ったという。たとえ生き残ったとしても、オレはその女の子の10年後以降が心配だと思った。それは過去の辛い出来事は記憶として残り、成人してから時限爆弾のように時間を経て爆発するからだ。

オレの経験から言うと、常に辛い記憶はつきまとい、人生が暗い方向に引き寄せられていく。しかし、それでも若い頃はなんとかその記憶に蓋をしながら、普通に暮らしていける。でも年を取ると、ある日急にその過去の記憶が怒りとともに噴出して抑えが効かなくなる。そしてうつ病を発症し、パニック発作が起こって社会生活が送れなくなる。

今、オレは頭の中の憎悪と折り合いをつけながら、少しずつだけど前向きに生きて行けたらと思っている。

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