夏想い

むくどり

夏想い

時経ちて隣の校舎朧気に聞こゆチャイムがただ愛おしい


参観日家の居間から子を想う親の姿を窓際に見ゆ


初夏迎え木々の緑の映えたるは無邪気に遊ぶ子供らの声


僕たちも同じ光を追いかけて全力だった時を思えば


梅雨の雨外で遊べぬ僕たちに雨が呼び込む図書館だより


帰り道葉に固まりし水滴にあの日の僕は宇宙を見つけ


泥まみれ優しく微笑む母の目にどうしようも無く夢中になった


音鳴らす吹奏楽を背景に君に教える数学ノ音


炎天下終業式の校庭に君の姿が陽炎に消ゆ


夏休み会話もせずに同じ時過ごす時間がとても楽しい


甲子園畳の上で応援す記憶の中の祖父は消え行く


祖母と見た打ち上げ花火音だけが私を残し静寂となる


蛍火を犬の散歩で共に見て今は蛍もあの子もいない


曇天の中に響くは蝉時雨この哀しみも流しておくれ


同窓会君の姿を探せども聞けるは知らぬ笑い声だけ


出来事も一つ一つが過去になり薄れていって儚く消える


思い出に君の笑顔を浮かばせて壊れぬように優しく触れる


また一つまた一つへと時は過ぎ僕らの縁は薄れて消える


あの人の笑った顔を思い出し静かに閉じる思い出ノート


夏の空この青嵐も繋がりて幸せ願う君の空かな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏想い むくどり @K-ras

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画