もっふもふな動物に囲まれる異世界スローライフ
たたり
プロローグ
東京のど真ん中にある動物病院、薄暗い夜の診療室で鈴木太郎は最後の患者様【老犬】を見送った。
時計は深夜2時を回っている。
疲れ切った顔で彼はデスクに座り、今日のカルテをまとめる。
「ふぅ…、これで今日も終わりか。いつまでこんな生活が続くんだろう…」
彼は溜息をつきながらデスクに伏せた。
目を閉じると、過労の影響か、意識が遠のいていく。気持ちいい。
ーー
太郎が目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。
青空が広がり、心地よい風が吹いている。
ゆっくりと起き上がり、周囲を見回した。
「ここは…どこだ?」
不思議そうに周りを見渡すと、見慣れない草木と、小さな動物たちが目に入った。特に目を引いたのは、ふわふわの毛を持つ動物たちだった。彼は立ち上がり、恐る恐る一歩を踏み出した。
「なんだ、この動物たち…?」
突然、背後から女性の声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
太郎が振り向くと、そこには若い女性が立っていた。花のように明るい笑顔を浮かべている。
「ええっと、ここはどこですか?僕はどうしてここに…」
「ここはアルファリアの小さな村です。私はリリナ・ウィンターズ、村の花屋をしています。あなた、見たことがない顔ですね。」
「鈴木太郎です。僕は病院にいて…突然ここに、何が起こったのかさっぱりで…」
リリーは太郎の混乱を感じ取り、優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ。とりあえず、私の家に来てください。落ち着いて話しましょう。」
リリーの案内で、太郎は村の中心にある小さな家に到着した。花が咲き乱れる庭が迎えてくれる。家に入ると、温かい紅茶の香りが漂ってきた。
「ここで少し休んでください。紅茶を淹れますね。」
リリーは手際よく紅茶を用意し、太郎の前に置いた。太郎は一口飲み、ほっとした表情を見せる。
「ありがとう、リリーさん。実は、僕は日本という国では獣医師をしていたんです。でも、たしか過労で倒れて…」
「そうだったんですね。きっとこの世界に来たのは何かの縁ですよ。ここにも動物たちがたくさんいて、あなたのような動物のお医者様が必要です。」
リリーの言葉に励まされ、太郎は少しずつ落ち着きを取り戻した。
「確かに、ここでも僕のスキルを活かせるかもしれない。」
太郎はそう決意すると、リリーに笑顔を向けた。
「ありがとう、リリーさん。元の国に帰る方法が見つかるまで、ここで新しい生活を始めてみるよ。」
「それは良かった!じゃあ、まずは村を案内しましょう。もふもふ牧場にも行ってみましょうね。」
「もふもふ牧場? ずいぶんと可愛らしいお名前ですね。」
太郎はリリーの後について村を歩き始めた。新しい生活の幕開けを感じながら、彼は希望に満ちた目で村の風景を見つめた。異世界でのスローライフが、ここから始まるのだった。
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