鏡の中の君へ - 永遠の君への願い -

密室

第1話

あの古民家に初めて入ったのは、とある夏の日だった。


僕は友人の拓海と勇太の三人で、いつものように近所の公園で遊んでいたんだ。


そこで拓海が「あの古民家って、お化け屋敷らしいよ」って言い出したんだ。

興味を持った僕らは、その古民家へ探検しに行った。


古びた木造の建物は、まるで廃墟みたいで正直ちょっと怖かった。

でも好奇心の方が勝っちゃったんだよね。


中に入ってみると、埃っぽくて薄暗い。

窓から差し込む光も少なく、静かでちょっと不気味な雰囲気だった。


「うわ、なんか怖いな」

ガラクタに埋もれたような部屋が続く。

その一番奥の部屋だけは、

ほとんどゴミも、家具さえも置かれていなかった。


その部屋の中央に、朱色の布を被せられた何かが置かれていた。


勇太がそっと、布をめくる。

古い鏡が、姿を現した。


「うあ、なんだ、この鏡」

勇太が、そう言って鏡に近づこうとした時、

拓海が慌てて彼を止めたんだ。


「やめろよ! 昔、この家に住んでた人が、

この鏡に閉じ込められたって噂があるんだぞ!」


拓海は、真顔でそう言った。


「マジ!? 怖いじゃん」


勇太は急に怖くなったみたいで、鏡から離れた。

僕はその鏡を見て、なんか妙な感覚を覚えたんだ。


鏡に映る自分の顔が、いつもと違う。

少し歪んでいて、ゆらゆらしてて、なんか不気味に見えたんだ。

まるで、自分じゃないみたいだった。


「なんか、気持ち悪いな…」


そう呟くと、拓海が僕に言ったんだ。


「お前、なんか変な顔してたぞ」

「そう? 気にしてなかった」


僕は、いつものように笑ってごまかしたけど、

内心、少し不安だった。


その日はそれっきり、何も起こらずに古民家を後にした。

僕はずっと、鏡に映る自分の顔を見つめてしまうようになっていた。

鏡の中で見た、あの少年の顔が忘れられなかった。

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