第39話
「え、田中さんと俺で何をしたって?」
「もう一度言おうか、人類全ての命……」
涼は田中に対し「待て待て」っと話を遮った。田中は「きょっとん」とした顔をしながら、涼の顔を眺める。
「どうしたんだい、具合でも悪いのかい?」
もう頭が「こんがらがっている」し、これ以上の「話は聞きたくない」どうせ、タールが見せた「幻想なんだ」と何度も頭を叩き続けた。
「ちょっと何してるんだい?」
「うるさいな、もう訳がわからないんだよ。12年後とか、人類が滅んだとか、タールが見せた幻想なんだろ! こんなおふざけには付き合いきれない。早く解けよ」
涼は「叫ぶ」があたりは静まり返り、何の反応もなかった。そう「生き物がいない世界」であり、生きていると思われる人間は「田中と涼」だけだった。
「落ち着いたかい?」
「触るな、どうせお前も……」
「バシーン」っと急に左頬を叩かれた。あまりの速さに「痛みが置いてけぼり」になった。涼は突然の出来事に放心状態であった。
「え……?」
「君、変わったね。前に会ったときはもう少し、志が高い子だったと思ったんだがね」
「俺に何を求めてんだ。まだ高校生なんだぞ。そんなに直ぐに、はい、そうですかって順応できる訳ないだろう!」
田中は涼の右手を掴み、ある言葉を唱えた。
「衝撃は、人を守り。罪には、制裁を与え。拳を飛ばすは、人に制裁を」
涼の右手にはガンドレッドが出現した。田中は、中心部にある赤の斜め線が入った部分に手を置いた。
「君にこれを託したのは、私だ。なぜなら、君なら運命に抗えると信じたからだ」
「だから、そんなこと言われても……」
田中は涼を抱き寄せ、顔を近づけてキスをした。
「え、え…、何をするんだ……?」
「ごめんね、それは選別だよ。もう時間がないみたいだから」
そのときは何の前触れもなく、訪れた。地面の中から黒い影達が涼と田中を取り囲み、包囲した。冷静な田中をよそに、涼は「事態が把握」できなかった。
「そろそろ、ニーグリ再開か。君はもう現実に戻るといい」
「何を言ってるんだ? 田中さんはどうするんだ」
「私かい? いつものことだよ。ずっとこの影にしばかれ続けるだけだから」
複数の影達が、田中に向けて走り出した。田中は涼に右手の掌を向けると、泡状の空気の塊に体が包まれた。上空へと浮かび上がった涼の体はどんどん薄くなっていく。
「さよならだ。佐川君。もし、君が現実になってしまったニーグリをクリアできたのなら、また会える筈だよ」
「田中さん!」
影達は鈍器や刃物のような物を手に持ち、田中をしばき続けた。赤い血が飛び散り、全身を貪られるかのような仕打ちを受ける。
「大丈夫、私は待っているから。ここで、君なら……」
田中の頭が潰されると同時に「涼の姿はこの世界」から姿を消した。
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