第17話
タキシード姿の老人と観光客は「遠足気分で楽しんでいる」ようだった。ステップを踏みながら、無邪気にはしゃいでいた。
ミカと隆の会話を盗み聞き、気分が高揚していた。その足取りは、演劇団の指揮者が「コーラス隊を指揮している」かのように軽やかだった。
老人が両手をパーンと叩く。どうやら「解散を促している」ようだ。影達は解散を促されると、蜘蛛の子を散らしたようにその場を去っていた。
誰もいなくなり、老人がその場に残る。
華奢な体が巨大化していく。その等身は筋肉隆々な見た目だ。背中には無数の棘が生え、鋭く尖っている。何やら「見覚えのある姿」となった。
「タイミングがよかったぜ」
サーザスの配下である影の1人、グーンであった。強靭な体と膨れた腹は、相撲力士を連想させる。手が長く、膝あたりの長さがある。
「今回は他の連中への連絡はいらねぇな、奴とはサシでやってやる。さて、探るか」
何やらブツブツと独り言を言う。影の池が出現し、その池に指を入れた。何やら指でかき回したり、ツンツンと押したりしている。
「やっと見つけたぜ、佐川さんよ。タールの仇は取らせてもらう」
何を探ったのかわからないが、涼の居場所がバレたようだ。影の池はグーンの足を被せると、消えてしまった。
その場で深く深呼吸をし、息を吐いた。目を閉じ30秒くらい精神を集中させている。パチパチと静電気が弾ける音が鳴る。
グーンは爪を突き刺し地面を鷲掴みした。そのままクラウチングスタートのような構えを取った。太ももの筋肉が膨張していく。
その状態から全身の力を足へ伝達させ、300mくらいの高さまでジャンプした。その有様はカエルに似ていた。
グーンのスピードは早く、大きな筋肉の弾丸のようだ。空を馳ける流れ星と類似する。
本の数秒で先程、涼と隆が交戦していた場所まで到着した。着地もスマートではなく、なんとも雑な着地だった。
グーン着地時、衝撃で多くの木々が倒れ、地面には大穴が空いた。土煙とくり抜かれた大地の上で、高らかに雄叫びを上げた。
「うぉー」という雄叫びは、地震でも起きているかのように揺れを感じた。震度にして、2くらいだ。
衝撃波は涼にも伝わった。その衝撃でマントが吹き飛ばされ、何事かと思った。すぐにマントを手に取りあたりを見回すと、獣の唸り声が響いた。
全く自体が呑み込めなかった。
「何が起きたんだ」
後方を振り返ると、そこには不気味な笑みを浮かべたグーンがいた。
「さぁ、あのときの続きだぜ、佐川さんよ。今度こそ、息の音を止めてやるぜ」
涼はタールのクロスボウを出現させた。目付きも悪くなっていく。奥歯を噛み締め悔しさの感情で、目一杯の力をこめる。
迷いなく、影の矢をグーンに向け、発射した。
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