第10話
「剣聖様、お会いできて光栄です!」
少年は意を決して話し出した。
「僕はメト・ガーリッツ、領主メノウ・ガーリッツの養子です」
少年は緊張しながらも話し続ける。
今日、この日、この時を心待ちにしていたのだ。
話したいことが沢山あるのだ。
一度話しだすと、これまでに溜まっていた思いが堰を切って溢れ出てくる。
「3年前に剣聖様がこのハレから旅立つのを見ていました。当時十歳の僕には剣聖様があまりにも格好良くて、憧れで、自分もああなりたいと思いました。あの時は北風の剣聖として、先代剣聖の後を継いだばかりだったあなたが、旅の間に数々の武勇伝を残しては名を名乗ることもなく去っていったことを耳にしてます。名声を求めずに人々を助ける姿は多くの市民の心に感謝と感動を与え、僕も同じように、剣聖様を慕う気持ちがますます強くなっていきました。少しでも憧れの剣聖様に近づけるようにと、僕も剣の鍛錬を続け、今では領内でも指折りの剣士としての実力を手に入れました。そして今、目の前に剣聖様がいて、領主から直々の命がある。これはきっと神が僕に与えた最大の好機。僕が憧れる最強の男への第一歩。絶対に僕はこの機会を逃したくない。剣聖様、ご迷惑を承知でお願いします。僕を剣聖様の元に置いてください、お願いします!!」
少年は勢いよく言い切ると、アナスタシアに頭を下げた。
対する彼女は、混乱しつつも無意識でケーキを食べながら話を聞いていた。
混乱した頭の中で、彼女はひとつの言葉に気を引かれた。
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