第3話

「気持ちいいーーーー!!」


 この空は彼女達だけのものだった。

 降り注ぐ日差しも、海からの乱反射も、風も雲も。

 彼女とその相棒の行く先を妨げるものなど何もない。

 二回りほど巨大化したアシモフ。

 それに跨る黒鎧のアナスタシア。

 空を駆けるひとりと一匹。

 彼は氷を操り道を作り、彼女は風を操り背中を押す。

 彼女達は一心同体となり、行くべき場所を目指した。


 目指す街の名はハレ。

 ガーリッツ領の領主が居を構える場所。

 北の果て、陸の孤島である裏フウマ村から陸路では遠い。

 しかし、海を渡れば近道だ。

 アナスタシアは面会に遅れまいと海の道を選択した。

 海の上を飛ぶことにしたのだ。


 アナスタシアはこれほどの長距離を飛ぶのは初めてだったが、うまくいった。

 風が気持ちいい。

 目に映る全てが美しい。

 これは良い選択をした。

 アナスタシアは兜の下で満足気な表情を浮かべる。


「もっともっと速く!」

「わふ」


 彼女らは流星の様に輝きながら空を駆けた。

 


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