俺の実家で居候中の彼女が許嫁になった件
結城辰也
0‐1 突然の訪問客
「あー母さん? いつもの手紙に仕送りは?」
俺はスマホを片手にベランダに出て母さんに話し掛けていた。
いつもなら毎月のように手紙と仕送りが届くのに今回はなかった。なぜかは分からないが米や野菜だけは届いていた。
「あーそれならもう既に送ってあるよ。もう少しだけ待っときな。すぐに届くからさ」
なんか知らないけど母さんが嘘をつく訳はない。でももし届かなかったら俺はバイト代だけで食い繋がないといけなくなる。そこだけはきついのでごめんだ。
「分かった。でももし届かなかったら――」
「大丈夫だよ! 心配はいらないから! あんたは心配性なんだから! 全く!」
「う」
なぜだろう? 心が無性に痛い。思わず声にも出していたしそんなに俺は心配性なのかな? でも本当にきついのだけはごめんなんだ。
仕方がない。当分は節約でもしておこう。
「あーそうそう。今日にも届くと思うから
スマホにミュートを掛けた。はぁ。母さんの愚痴は長いからきついんだよな。とにもかくにも今日中にはくるっぽいな。凄く助かるから早くきてほしい。
さてそろそろミュートを解除してと――。
「んじゃ母さん! 元気で! バイバイ!」
「んん? ああそうね。要件は済んだし――」
スマホの電話を静かに悟られないように切った。はぁ。話が長いのは年配にあることなのか。とにもかくにも今の俺は大ピンチな訳だ。さてはて本当に今日中にくるのだろうか。待つしかできないからこれまた無力を感じる。
スマホを持ったままアパートのベランダから部屋に入り窓を閉めた。母さんと会話をしていた時には窓は開いていた。中はそれなりに涼しく極端な暖房や冷房はいらなかった。人によって体温調節は違うからなんとも言えないのが現実だ。
それにしても配達がくるまでなにをしておこうかな。ここはスマホゲーが定番だけどもベッドの上で寝るのも悪くないな。あーでも居留守は駄目って言われたしここはのんびりとソファの上で
テレビの前という定番の位置にあるソファ。背は壁にくっつくように配置されており頑張れば四人以上は座れるサイズ感だ、まぁ五人となれば推奨はしないけども。
さてソファに座りなにをするかだけどひたすらに呆然とするのが最近の流行りだ。俺しかしていない可能性もあるけどこれが効率の良い時間経過を
一人暮らしだからこそ得られるなにかがあると信じ俺は今日も呆然としようとしていたそんな時――。玄関のチャイムが鳴る音がした。いつもの宅配にしては微妙な時間だなと感じつつもテレビとソファの間にあるテーブルに置いていた財布を手に取り玄関ドアまで急いだ。
なんか頼んだ覚えはないけどいちようでた方が良いと感じた。可笑しい、いつもの宅配なら声掛けをしてくれる筈なんだけど。今回はなかった。それでも出てしまうのは人間の性か。
玄関ドアにまで辿り着くとドアノブに手を掛け開けてみた。静かに開く扉の向こうには誰か知らない美人な女性が立っていた。
「ん? どこかで? 確か――」
「私の写真のことかな?」
「え!? ……ああ!? あー!?」
確かにそうだ。父母が勝手に送ってきたんだ。たくさん送られてきた中に確かに彼女の写真があったはず。ということはこの女性は――。
「初めまして私は
「へ?」
「え? ……知らないんですか? 嘘」
「ううん?」
「今日からですね。私は貴方の
「いやいや! 可笑しい! なに言ってるんだ!? ってこれ」
「
「嘘!? ……あの母親め!」
「あ! 駄目ですからね! 目上の方にその感情はないですからね! 特に身内でも駄目なものは駄目ですから!」
「きびしいな」
「当たり前です! ……それよりも疲れました。親公認の仲になりましたので失礼します」
「え!?」
嘘だろ。七瀬さんは堂々と俺の部屋に入り込んでいった。なんだか怒らしたら怖そうで思わず退いてしまった。
これから始まるのは許嫁による同棲生活。それは即ち俺にとってプラスとなるかマイナスとなるかの
果たして俺は七瀬さんと無事に過ごせるのだろうか。
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