第5話 王室金塊強奪作戦②

ジン達は宮殿から公園を別つように真っ直ぐに伸びる大きな一本の道の真ん中に転移した。


「ドカァーーンッッ!」 


       「ドカァーーーンッッ」



辺りはすでに暗くなっていて、人の気配はなく、仕掛けたオニの時限式爆弾が時折、爆発音と閃光を上げている。



「こんな所で本当に合っているのか?」


「間違いない。反応があったのはこの真下や。地下11m付近に飛ぶで!」

ジンの懐に入っていたオニが顔を出して答える。



ジンはオニと一緒に転移する事ができる。

人との転移を試したことは無いが、両手抱えるくらいの荷物も一緒に転移出来るし、動物のオニが出来るなら人でも問題ないと考えていた。


ジンはゆっくりと地面に手を当て、ここから真下の空間をイメージした。

下へ下へ潜るように11mという距離を正確にイメージする。

4階から地上見下ろしたくらいの位置だ。上下方向や地下へ飛ぶ実験もしていた。問題ないはずだ。

そう思いながらジンは集中する。


すると、光がジン達の体を包み始める。


「キタな!着地に気をつけろよ!中はどうなってるか分からんで!」


オニの言葉に少し動揺するも、光はジン達を飲み込み消えていった。











真っ暗な地下で粒子の青い光が薄らと周囲を照らし始める。


「ドスン」


地下室の空中に転移したジンは、周囲の暗闇に焦り、前のめりで倒れるように地面に着地した。

懐に入ってたオニは、寸前で懐から飛び出していた。


「いててて」


「大丈夫かいな。やから気をつけろって言ったやろ〜。ほら、ライト照らして」


オニに催促されてジンは装備していた軍事用ライトを付けた。





すると、ライトの明かりに映し出されたのは、


地下室と呼ぶには余りに大きな長いトンネルと、両脇にズラリ並べられた棚の上いっぱいに、黄金に輝く金のインゴットや、金のコインなどの金塊が眩しい光を放っている姿だった。

金塊の並べられた棚が延々と奥まで続き、ライトの明かりでは何処まで続いてるか分からない程だった。



「すげぇえぇえ〜」


ジンとオニは驚嘆と至福の喜びに目を黄金に輝かせていた。


「これ、いったい幾らあるんだ?!」


ジンの問いに少し鼻息の荒くなったオニが答える


「1キロのインゴット一個で約1200万円で、それがこんだけの数やと・・・少なく見ても数百兆円、下手したら1000兆円はいくで!」


「1000兆円ッッ!?」


余りのスケールの大きさに、実感できずに立ち尽くすジンだが、その両手とポケットには既に金塊が隙間なく入っていた。


「こんな量の金塊、さすがに置き場所考えてないぞ」


戸惑いながらも喜びを隠せないジンにオニは答える


「今は全部持ち帰る必要は無いんちゃうか。とりあえず目立たへん所から必要な分だけ持って帰るで。位置情報も分かった事やし、こんだけの量が多少減った所でしばらく気付かれんやろ。折を見てまた今度全部運び出すで」


「アイアイサーッ!」


そう言って意気揚々にジンとオニ達は、棚から少しずつ金塊を集めて次々と転移で運び出して行った。


数百キロの金塊を運び出した頃、時折聞こえる地上からのオニの時限式爆弾の音が鳴り止んでいた。


「そろそろ時間切れや。すぐに警備やら消防やらがここら辺を包囲するぞ。この地下にも来るかも知れん、誰かに見られる前にズラかるで!」


オニの言葉に、ジンは名残惜しそうに、ポケットと両手いっぱいの金塊を抱えてオニと一緒に転移した。





オニの言葉通り、爆発が止んでしばらくすると消防やら警察車両が雪崩れ込んできていた。

既にマスコミと思われるヘリが上空をいくつも飛び回り、あちらこちらで立ちこめる黒煙の物々しい雰囲気が宮殿の辺り一体を包みこんでいた。



盗難された金塊を含まずとも、その被害総額は数百億円にのぼった。

世界一豪華と言われた宮殿の姿は消え去り、多くの謎を残したままバラの宮殿連続爆破テロ事件として瞬く間に全世界のトップニュースとなった。









「金塊♪金持ち♪金塊♪金持ち♪金塊♪金持ち♪ダーッ♪!!」

「金塊♪大トロ♪金塊♪大トロ♪金塊♪大トロ♪ニャーッ♪!!」



家に戻ったジンとオニは部屋の真ん中に集められた金塊の周りをグルグルと、自作のリズムに合わせて謎の歌を歌いながら作戦成功の喜びを分かち合っていた。


「やっぱすげーよオニ!作戦大成功!全部計画通りじゃねーか!」


「へっへーん♪ジンの転移能力さえあれば、このくらいは余裕や!感謝の気持ちは大トロで示してや~ハッハー♪」

流石に嬉しいのか、珍しく浮かれているオニ



「それにしても、あんな装置の使い方よく知ってたな」


「説明書みたらだいたい分かるで。あとは調べたい地中の範囲から計算して爆弾の位置と爆発の規模を調整し、一気に揺らすだけや」


「簡単に言うけど、そんな計算、俺には一生できそうにねーよ」


一般人とはかけ離れたオニの高スペックにジンの予感は確信に変わりつつあった。



「次はこの金塊を現ナマに換えないとな!」


「それに関してもワイに考えがある。もちろん裏ルートで、最初の接触はジンにも危険が生じるかも知れんけどな」



そう語るオニの言葉は、金塊を換金してくれる極道のギンジさんとの出会いの始まりになるのであったが、それはまたいずれ話す事にする。




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