第2話







 でもね・・・入内する前に中級貴族の男達から文が届くようになるの。


 興味があれば女房を介して文を返すけど、興味がなければ無視するわ。


 父親は娘を后がねとして育てている訳だから、そこら辺の男を娘婿に迎えたくないという理由で女房達に娘を護るように命じるのだけど、実は彼等って地方に赴いて蓄財しているの。


 ぶっちゃけると都の貴族より彼等の方が金を持っていたりするわね。


 で、求婚者の中で特に熱心な男はプレイアブルキャラが無視しても姫付きの女房達に賄賂を渡すから、それに負けた女房達は主人が眠る部屋に求婚者の男を招き入れるの。


 ちなみにプレイアブルキャラである燁子は父親に似て周囲に気遣いが出来る華やかで気品に溢れる美少女で、桃子は野に咲く可憐で小さな花に譬えられるような見た目に反して我が強い美少女。いずれも身長は百六十センチメートル。


 帝や父の成彰をはじめとする上級貴族達は乙女ゲームに出てくるに相応しい女性受けしそうなイケメン仕様で、身長が高くても百七十センチメートルに届くか届かないかくらい。


 対して、中級貴族の男達って厳ついというか精悍というか・・・帝や成彰とはタイプの異なる顔立ちをしていてそれに相応しいバリトンボイス。


 何か無駄に声がエロい!


 その声を聴いているだけで妊娠してしまいそうなくらいよ♡


 しかも!!


 百八十センチメートル超えのマッチョとゴリマッチョなの♡♡♡



『〇〇(デフォルト名かプレイヤーが付けた名前が入る)・・・貴女に恋焦がれております。どうか・・・俺を受け入れて下さい』



 本人同士で何度も和歌の遣り取りをしていたらプレイアブルキャラは求婚者と結ばれる。そして求婚者はプレイアブルキャラの元に三日間通い三日夜餅を食べたら婿と認められて結婚成立。露顕・・・現代で言う披露宴をするの。



 興味がなかったらプレイアブルキャラは断るのだけど、求婚者は恋焦がれているから強硬手段に出るの。


 そこでプレイアブルキャラと求婚者とのバトル開始!


 某国民的RPGのように『戦う』→『技』→『柔道・空手・合気道・プロレス』の中でどれか一つのコマンドを選択したら後は自動的に進んでいくの。



 〇〇(デフォルト名かプレイヤーが付けた名前が入る)のジャーマンスープレックス。


 求婚者は10(プレイヤーがどれくらい鍛えたかで数値が変わる)のダメージ。


 求婚者のロメロ・スペシャル。


 〇〇(デフォルト名かプレイヤーが付けた名前が入る)は20のダメージ。



 ターンが終わったら再び『戦う』→『技』→『柔道・空手・合気道・プロレス』の中でどれか一つのコマンドを選択。


 これはどちらかのHPが0になるまで続くの。


 プレイアブルキャラが勝ったら中級貴族の求婚者達は諦めてくれるけど、負けたら・・・その・・・何て言えばいいのかしらね?


 初夜?


 でもプレイアブルキャラは同意していないから、無理やり求婚者との初夜を迎えさせられちゃうの。


 その時のスチルが・・・♡


 プレイアブルキャラに求婚してくる中級貴族の男は何人かいるのだけど、その中でも特に康親様の三角筋に上腕二頭筋、大胸筋に腹直筋、大腿四頭筋に下腿三頭筋、大臀筋・・・


 ふ、ふつくしい・・・


 あの芸術的と言っても過言ではない筋骨隆々な肉体に男の色香がダダ漏れな立ち姿を思い出しただけでも鼻血が・・・


 筋肉フォーーーッ!!!



『おお、娘よ。あのような男に負けてしまうとは情けない』



 私の好みはどうでもいいとして・・・


 中級貴族の男に負けてしまったプレイアブルキャラは某国民的RPGの王様のように、所持金の半分を取られて生き返った勇者に対するセリフを父親に言われた後、夫と共に中央から指定された国(地方)へと向かうの。


 でね・・・夫と共に赴く国って実は都と比べたら食文化が遥かに豊かで進んでいるの!!


 例えば東北地方だと牛タン・ずんだ餅・はらこ飯・きりたんぽ鍋等。


 関東地方だと握り寿司・巻き寿司・鰻の蒲焼き・うな丼等。


 東海地方だと手こね寿司・トンテキ・どて煮・味噌煮込みうどん等。


 中国地方だと蕎麦・あなご飯・牡蠣等。


 四国地方だと鯛めし・讃岐うどん・あん餅雑煮等。


 九州地方だと馬刺し・いきなり団子・地鶏の炭火焼き・しゃぶしゃぶ・黒豚の味噌漬け等。


 挙げるとキリがないけど、都と違って地方では『今日は風呂に入っていけない』とか『獣の肉を食べてはいけない』という風に占いとかに縛られていないから平気で口にしていたの。


 ・・・・・・平安時代に鰻の蒲焼きとかがないのに何で食べれるの?


 平安時代は蒸し風呂なのに何で裸になって湯船に浸かるの?といった類のツッコミを入れるのは野暮でしかないわ。


 だってゲームだから。


 受領の妻になったプレイアブルキャラは自分以外の女を作らない一途な夫と共に領民の悩みを聞いて問題を解決したり、特産品を開発してそれを他国で売って金を稼いだり、源泉かけ流しの温泉や屋外等で激しく夫に愛されたり、郷土料理を堪能したりという風に穏やかで幸せな生涯を送るの。


 で、子孫達は武家政権の中心で活躍したり、戦国大名になるという───。


 個人的にはこれってハッピーエンドじゃないの?と思うけど、実はゲーム的にはバッドエンド。


【華の苑~後宮に咲き乱れる花々~】は中宮、そして皇太后になる事を目的としたゲームだから受領の妻がバッドエンドなのは仕方ないわね。





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