第5話 くっついて

しゃきしゃーん」

「んー。なにー?」


リビングからキッチンに立つ咲を呼ぶ。


「これ買っていい?」

「だめー」

「なんで!まだなんも言ってない!」

「あたしがみてから決める。」

「んー…。」


「なに。みせて。」


咲が手を拭いて僕の傍に来る。


「…これ。」

「…なにこれ。」


咲が頭をグルグル回している。


「プラモとは違うけど組立系のおもちゃ。それか、車の模型。トミカでもいいよ。」

「子供か?」

「大人向けのトミカっあるんだよ。スポーツカーとか色んなの。」

「後で見せて。」


咲は探究心の強い人で、先入観で判断しない人。

僕の世界観とか、考え方とか、性癖とか、色んなものを受け止めて少しずつ理解してくれた。



だから玩具一つ取っても一緒に見てくれる。

その上で判断してくれる。



――――――――――――。


「それで?さっきの『トミカ』だっけ?今どんなのあるの?」


一通り水仕事を終えて咲が僕の前に来た。


「…これ。かっこいくない?」

「…うーん。私は車ってすきじゃないからわかんないけど、こっちは可愛い。」


咲は、端にあるディズニーのトミカに目がいった。

「こういうの。ディズニーいっぱいあるよ。」

「すごい。可愛いじゃん!見せて!」


完全にパソコンをジャックされた。


僕はその間咲に後ろから抱きついてふにふにしてた。


「『ふにふに』しててもいいけどさ、」

「ふに?」

「ちょっと今日汗かいてるから。匂うかもよ?」

「だいじょぶ。いい匂い。好きだからいいの。ぴーぴー言うな。」

「…はいはい。」


咲がクスッと笑って少し呆れて答える。


元々咲さんは、クールな女性だった。

一人でバーを切り盛りしてて、強くないと戦っていけなかった。


でも、週末を一緒に過ごす様になってから、

僕に可愛い面を見せるようになってきた。


なんにもないけど、咲の家のベットで2人で飲んでた。

咲の隣にテーブルがあるのに何故か散らばってる空き缶。


それを朝方集めてまとめてゴミの日に出せるようにして、咲の軽く食べれるものを作ってから帰る。


お礼とかは特になかったけど、それでもよかった。一緒に飲み始めると愚痴の嵐、

でも楽しかったし可愛かった。


たまらず咲が寝てからおでこにキスしてベットを離れてた。本当に可愛かった。

今でもそれは変わらない。


泥酔すると、サイコパスみたいに僕の事を襲い始める。

締めつけも凄くて、何度も何度も襲われて吸い尽くされる。


でも一切覚えてない。そんな咲がたまらなく好き。



―――――――――――――――。


「ふにふに。」

「なに?」


咲の背中に甘える。


「だいすき。」

「あたしも。」

「あー!」

「なに?うるさい。」

「大好き…。」

「なんでふてくされる?」

「眠い……。」


静かに咲の後ろで横になって咲の体に鼻をつけて寝る。


「ふに太郎…。ベットで寝なさい。体痛くなるよ?」

「いーの…。」

「ここに居たいよね。」

「うん。」




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