第44話

「ぼくのおとーさん?」

『……そうだ。私はお前の父親、魔王ルエル様の四天王が一人、土の四天王である土龍のランドルフだ』

「ランドルフ様……うぅ、お会いしたかったです……!」



 クレアが涙をポロポロと流し、アイリーンが胴体を優しい笑みを浮かべながら撫でる中、リンはランドルフに話しかけた。



「ランドルフ、お前さんがこの消失現象に巻き込まれたのはここに来てすぐの事なのかぃ?」

『そうだ。ラミノの近くに拠点を作り、この地を初めに侵略しようとしたのだが、街に来た瞬間に強き力の波動を感じ、気づいた時には街や住民達と共にこのような目に遭っていた。初めは私も住民達も変化には気づかず、争いあってはいたのだが、お互いに一切傷つく事もなく空腹や渇きを感じる事もなかったため、これは争いあっている場合ではないと考え、協力する事にしたのだ』

「やはりお前もそうだったか! 俺とマリアもそうだったぞ!」

「こればかりは仕方ないわ。それで、どこに拠点を作ったの? 私は海底に、アーヴィングは炎の結界の中に作ったけれど」

『私は土の四天王。当然、この下だ』



 ランドルフは前足で地面を叩く。



「なるほど、地中ですか。ですが、流石に移動する手段はあるのですよね?」

『無論だ。近くにポータルを作ってある。そこから移動は出来るはずだが……』

「この件の黒幕がポータルをそのまま残してるとは思えないわね。さて、どうしたもんかしら」

「んじゃ、ちっとおもしれぇ奴らに探してきてもらうかね」



 リンは夜行の書を取り出すと、開いたページに手を置いた。すると、幾つかの光の珠が夜行の書から現れ、それらは二体の巨体の蜘蛛の姿に変わった。



「ひっ!?」

「かっかっか! 土蜘蛛や女郎蜘蛛の姿は初見では驚くわな! よう、おめぇら。ちょいと力を貸してくれねぇかぃ?」

「それは構わんが」

「私達に力を借りるって事は結構人手が必要な事なのかい?」



 リンはどこからかキセルを取り出すと、指をパチンと鳴らして火をつけ、気持ち良さそうにタバコを吸った。



「はあー……そうだ。土蜘蛛と女郎蜘蛛は子蜘蛛を操って色々な事が出来るからな。なんか変わったものがねぇか調べてきてほしいんだよ」

「また具体的ではない物言いだな。だが、良いだろう。女郎蜘蛛、やるぞ」

「あいよ。さあ子供達、探しといで」



 土蜘蛛と女郎蜘蛛の体から多くの子蜘蛛が現れ、地面を黒く染めながら移動していくと、アイリーンとマリア、そしてクレアはその光景に口を押さえた。



「う……手伝っていただいているのはわかっているのですが……」

「この光景、結構気持ち悪いわね……」

「お二人とも、申し訳ありません……」

「構わん。誰しも得手不得手はあるでな」

「そうね。さて、そろそろ何か見つけそうだけど」



 女郎蜘蛛が辺りを見回していると、土蜘蛛は何かに気づいた様子で耳を澄ませた。



「ふむ……そうか」

「土蜘蛛、見つけたかぃ?」

「そのようだ。行くぞ、お前達」

「はいよ。ランドルフ、ちょいと待っといてくれや」

『わかった。皆、気をつけていってきてくれ』



 ランドルフの言葉に頷いた後、リン達は土蜘蛛の案内に従って歩き始めた。

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