第25話
「四天王……この辺りで四天王の姿を見たってぇ話を聞いたと王様が言ってたが、お前さんの事だったみてぇだな」
『恐らくそうね。元々はこの辺りを支配するように魔王様の命を受けて来ていたのだけど、少しずつこの地域が消えていく謎の現象に巻き込まれて私はここの住民達と一緒にここに閉じ込められてる。だから、消えていったというのはそちらから見た現象で、私達からすればよくわからない力によって別の場所に引きずり込まれた形になるわ』
「支配しに来たにしてはここの住民だった奴らと仲良くやれてるみてぇじゃねぇか」
『私だってこんな事になったら魔王様のご命令どころじゃないわ。だから、本来は戦いのために使っていた水の魔術や歌の力を住民達のために使っていたらいつの間にか私もこの町の一員として認められていたの。何だかんだで住み心地は良いし、お腹が減ったり病気になったりする事もないから、こんな状況じゃなかったら最高の生活と言えるわ』
「かっかっか! 何事も都合よくはいかねぇってこったな。さて、この件をとりあえずアイリーンやオーマにも伝えるとするか。風一郎、頼んだぜ」
「あいよ、親分!」
風一郎はリンの肩から飛び立つとアイリーンやオーマが歩いていった方へ飛んでいき、それを見送ってからリンはマリアに話しかけた。
「しかし、なんでお前さんだけ俺達の事が見えて、こうして話せるんだろうな。なんか心当たりはあるかぃ?」
『これといっては無いけど、考えられるとしたらお互いに力が強いからそこで認識合えたり話が出来たりするんじゃないかしら』
「なるほどな。そういや、さっきこっちに何かあるかもしれねぇと言ってたが、そりゃあどうしてそう思った?」
『こういう時の定石よ。閉じ込めてる側には何も置かず、届かない方に何かを置いておく。そうすれば永遠に閉じ込めておけるでしょ?』
「かっかっか! 違いねぇや。ただ、軽く見回した感じじゃそんなのは無さそうに見える。下手すればこっちが認識できねぇようなカラクリが仕掛けられてる可能性があるぜ?」
『その可能性は高いわね。はあ……もう20年近くも魔王様のお側を離れているから魔王様の事が心配で仕方ないわ』
マリアがため息をつく中、リンは決心をした様子で口を開いた。
「その魔王なんだが、今は行方しれずのようだぜ」
『……え? ど、どういう事……?』
「お前さん達の身に起きている現象がこの世界の各地でも起きていて、俺の故郷も消え去った。んで、魔王の領地も例外じゃなかったみてぇで、配下達も巻き込まれた上に魔王自身も力の大半を失ってどこかに行っちまったようだ」
『魔王様が……ああ、なんて事なの……』
マリアが崩れ落ち、住民達が駆け寄りながら慰める中、リンはその様子を見ながらマリアに声をかけた。
「そんなお前さんに提案がある」
『……何よ』
「お前さん、一時的にでも良いんだが、俺の百鬼夜行に加わらねぇかぃ?」
『百鬼夜行?』
「そうだ。お前さんが敬愛する魔王のように俺にも慕ってくれる仲間達がいる。おれぁお前さん達四天王もその魔王も百鬼夜行に加え、この世界に起きている現象を解決しようと思ってるんだ。どうだ? ちっとばかし手を貸しちゃあくれねぇかぃ?」
マリアは差し伸べられた手を見た後、その手を取ろうとした。しかし、二人の手がふれ合う事はなかった。
「やっぱ触れるのは無理か」
『そうみたいね。けど、あなたの話に乗るわ。私だって魔王様を探したいし、私達をこんな目に遭わせた奴に一泡吹かせてやらないと気が済まないものね』
「へへ、決まりだな」
『ええ』
リンとマリアが笑い合っていた時、そこにアイリーンやオーマを連れて風一郎が飛んできた。
「おやぶーん、みんな呼んできたぜー!」
「おう、お疲れさん。アイリーン、オーマ、ここにいるマリアって奴が見えるか?」
「ええ、見えますわ。他の方も港町の様子も」
「私も見えている。リン、事情の説明をしろ」
「あいよ」
リンはアイリーン達を見ながらここまでの出来事について話し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます